第4話 真意

「その日の夕方、先生によってミレイの死が伝えられた。苦しんだ様子は一切無く、今にも吐息が聞こえてきそうなほど穏やかだったそうだよ。そして後日、帰ってくるルークを待ってミレイの葬儀が行なわれた。その時のルークの沈み様は忘れられない。自分の愛した人の死に目にあえず、しかも自分がしてきた事が無駄になってしまったも同然だったのだから。ミレイの言葉は伝えたが、それでもあいつは立ち直れなかった」

「そのすぐ後よ。ミウ、あなたが産まれたのは。ミウがミレイと雪肌だと知ったルークは、今度はあなたのためにまた研究を始めたの」

「……おかしいよ」


 両親の思い出を聞き、それまでずっと黙っていたミウが口を開く。その目には、悲しみと戸惑いが滲んでいた。


「本当にそうなら、なんで私に隠そうとしてたの? 何となくだけど、分かるよ。私が雪肌だから、おじさんはきっと私がミレイさんの生まれ変わりみたいに思えたんだ。だから、私なんて……」


 ミウは両手を握り締め、両目固く瞑り、歯をぎゅっと食い縛る。そしてその目からは大粒の涙が溢れ出した。

 その様子を見て、二人は困ったように顔を見合わせ、小さく溜息を吐く。そして二人はミウの目の前にしゃがみ込むと、その頭の上に手を置いた。


「だからルークに口止めされていたのよ。ミウがそう思い込まないようにって」

「……え?」

「確かに最初はミウの言う通り、ルークはミウの姿にミレイを重ねていたよ。けど、成長を重ねていくにつれ、容姿、性格、好みの全てがミレイと違っている事に、ルークは気付き始めたんだ。そしてお前が六つになった頃、ルークは言ってくれたよ。『もうミウの中にミレイを見たりはしない。俺はあの子の為に、そしてこの先産まれてくる雪肌の子供達の為に、この地でも根付く草花を作って見せる』と」

「ほんと、に?」


 まだ信じられないといった表情で、ミウがミョルク達に視線を合わせる。そんなミウに、シーアはにっこりと笑った。


「ええ。だってミレイはこんなに泣き虫でもないし、こんなに甘えん坊さんじゃなかったもの。大丈夫。皆、ミウの事をミウとして見てるわ。だからね、ルークの事、信じてあげて」

「……う、く、ああああ!」


 ミウがシーアにしがみ付き、その胸に顔を埋める。本当に怖かったのだろう。自分が誰かの代わりだったのかもしれない。自分が自分として見られていないかもしれないという事に。

 だがそれが違っていたと安心から、次から次へと涙が溢れ、あっという間にシーアの服をびしょびしょにしてしまった。

 シーアはそんなミウを愛しそうに抱きしめる。そしてその様子を、ミョルクは優しい目で見守っていた。

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