第5話 第四章
ミハエル・ムーア死亡現場は管理棟に隣接するゲートにあった。プレス工程を眺めるジュリーが言った。「あれは何をしているの?」それにトムが答えた。「古いAT型アンドロイドをプレス処理する様ですね」
「あれが、ミハエルを殺害した犯人ですよ!」と、ブライアンは苦々しく言い捨てた。
「あれが。捜査も終わっていないのに、随分と急がれるんですね」
「警察・検察・自治組織からの許可が下りました。更新にはいい機会です」
プレス機が作動し、古い大型アンドロイドが鉄塊となってゆく姿をトムが凝視している。
「これで一件落着ですね」
「そうなりますね」
ブライアンは肩の荷が下りたように柔和な表情を作り、弛んだ頬の片方の口角を上げた。
「そう思われますか?」
ジュリーの言葉に、思わずブライアンの顔に困惑の表情が浮かぶ。
「実は容疑者AT-0928に廃棄処分許可が下りたのは、事件が終わったからでは無いんですよ」
「では、事故として処理されたのでは無いのですか!?」
「今回あたしが派遣されたのは、別件です。その説明を聴く義務と権利がブライアンさん、貴方にはあります。まず、事件の概要から――」
現在、労働環境改善の為にサマータイムが実施されている。始業時間を九時から八時に変更し、三時間労働後、三時間の休憩、その後三時間の作業となる。肉体労働はアンドロイドが担っているので、人間はそれを管理するだけだ。
その内の一人が時間外に現場へと立ち入り、アンドロイドに殺害された。
「おかしいとは思いませんか? ブライアンさん」
「何がです? 故障したアンドロイドが事故を起こした。よくある事でしょう」
「確かにね。作業終了後に貴方達はよく、作業現場に立ち入っていたのですからそういう事もあるのかもしれない。ブライアンさん、警察の捜査能力を舐めてもらっては困りますよ!」
ジュリーの威圧にブライアンの顔に汗が目立ち始める。そこに作業終了のサイレンが鳴り響き、作業をしていたアンドロイド達が続々とメンテナンスベースへと戻りはじめた。
「さぁ行きましょう」
二人と一台は管理棟の階段を降りミハエルの死亡現場へと足を踏み入れた。ジュリーが携帯端末から事件現場の写真と、地面に残されたマークを照合しはじめた。そこへ突然、管理室に居る筈のデヴィットが現れ、鈍器の様な物を振りかざしジュリーに襲い掛かった。
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