迷子の仔猫(4)
なあなあ、相棒。この魔法具ランプ、すげえ明るくない?
「明るーい。このガラスのところを工夫してあって周りに光が拡散するようになっているのね。いただいちゃおうかしら?」
ロイスが寝静まってから店の商品を見せてもらってる。魔法具ってこんなに種類があるもんなんだな。
家事に纏わるもんが圧倒的に多いけど、有るとちょっと便利的なもんも並べてあって面白い。
「キグノは本当に魔獣なんだな。それもかなり利口だ」
「はい、彼はわたしとずっと暮らしているので道具の扱いにも慣れています」
ん? 普通に魔石に魔力を流してランプを点けたのが意外だったか、親父さん?
「こんな風なら確かに人と魔獣も暮らせるのかもしれんな」
「こう言ってはなんですが、わたしとキグノとなら可能です」
「息子の手から生傷が消えないのを見ていると、叱りつけてでもロロを野に放すようにさせなければと思っていたんだが」
そりゃそうだろう。
「あなたの判断は正しいです、ホルスさん。ロイスとロロが一緒に暮らせる時期は非常に短いと思います。どこかで決断しなくてはいけないでしょう。私の独断でやるのはこちらのお宅にとって良いとは思えなかったので口出しは遠慮していますが、お手伝いならできると思っています」
「感謝している。妻と話し合おう」
教育方針ってもんがあるもんな。
ラウディは裏庭で自由にさせてもらってるし、上階の居住空間には余裕があってちゃんと客室もあった。ゆったりとしたベッドの横の床で俺も休ませてもらうぜ。
◇ ◇ ◇
俺は朝から時間を掛けて、ロロを外に連れ出して色々と教え込むつもりなのを、リーエが理解するまで色んな方法で示した。それでロイスに付き合うことにしたらしい。ラウディに一応は護衛を頼んであるから、よほどのことが無けりゃ大丈夫だろう。
よし、押さえ込んでるから仕留めろ。喉に噛み付いて、ぎゅーってしとくんだぞ?
「うん! こう?」
ぐはっ! ビリっときたぜ、ビリっと。
「あれ? 駄目ー?」
そういうことか。
そりゃ、こいつの家族は電撃を発しても痺れないだろうさ。同じ雷属性なんだからな。でも、俺はきっちり痺れちまうじゃん。
俺と居るときはビリビリはやめてくれ。
「そうなの? やめとくー」
頼むな。さあ、もう死んじまってるからいただこうぜ。
「食べるー!」
ロロはまだ温かい獲物に食らい付いてる。狩りたては格別だろ?
「ここ、美味しーの。お父さんもお母さんも、ここ食べろって言ってくれるよ」
内臓な。そこは栄養たっぷりだもんな。
「でもロイスのお家だと出てこないから」
あー、そいつは難しいぜ。処理が面倒で普通は肉屋じゃ扱ってないからさ。
大きめの都市なら専門に食わせてくれる店はある。そこで出てくる内臓は綺麗に洗われてて、こういう生のコクや旨味はないんだけどな。そこが良いんだけど、人間は臭いって感じるらしい。
「美味しいね?」
美味いな。目一杯食って帰れよ。
ちびとはいえ結構な健啖ぶりだ。育ち盛りの肉食獣ってのは本当によく食うな。親父さんもお前に食わせるのは大変だろう。俺みたいにパンや野菜を食ったりしないと、胃袋に詰め込むのは肉以外無いじゃん。
腹は膨れたか? 休んだら今度はお前が追い掛けるんだぞ?
「うん、やってみるー」
狩りのほうはなかなか上手くはいかないが、ロロに必要な栄養を摂らせることはできたな。さて帰るか。
◇ ◇ ◇
「すごかったんだ! リーエってめちゃくちゃ頭良いんだもん。びっくりした!」
「そんなことないのよ」
相棒の教師っぷりは年季が入っているからな。
「難しい問題だってささって解いちゃうし、誰にでも分かるように説明してくれるんだ。あの計算苦手なクリントが分かるくらいなんだもん」
「そうなの? 良かったわね」
久しぶりに友達に会えたから興奮してるだけじゃないな。相棒が自分の知り合いだってのが自慢で仕方ないみたいじゃん。
「やっぱり勉強は楽しいでしょう? お友達にも会えるし」
お袋さんは通わせたいみたいだぜ?
「でも、ロロがいるし……」
「ロロもしばらくお外で勉強が必要みたいよ。キグノがそう言っているもの。その間はロイスも勉強してないとロロに負けちゃうんじゃない?」
「う、うん、勉強する。リーエお姉ちゃんも一緒に通ってくれる?」
「ええ、職員さんも来てくれれば助かるって言ってくださったものね。あなたが頑張るならわたしも教え甲斐があるけど?」
「勉強頑張る!」
うまく誘導できたな。これで当面ここの夫婦の不安はいくらか解消されるだろう。その間に心を決めてくれりゃ万事解決じゃん。
しかし、真ん丸な腹で仰向けに眠りこけてるようじゃ、
まったく。お腹ぺろぺろぺろぺーろぺろぺろ。
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