第5話
「あの豊島区マネージャー、ホントに腹立つわ。ここで、しっかり訴えて、完膚なきまでに叩きつぶしてやるわ。」
受験の時にはなかった受付があり、受付嬢もそこにいた。
ずんずんと歩く靴の摩擦プレッシャーで床をすり減らしながら、美人の受付嬢に向かう千紗季。
「いらっしゃいませ。ソコドルの真北千紗季さんですね。訴えの内容は聞いています。そちらの階段で二階に上がれたら、お話しを伺います。どうぞ、移動してください。ニコッ。」
受付嬢らしく、爽やかな印象に、ホッとした千紗季。
「わかったわ。受験の時は、ロープがかかったけど、今日はそれがないわね。冷静沈着に猪突猛進して、思いを遂げてやりんだから!」
静かな心でファイティングするという理想的な闘志の燃やし方で階段へ向かう千紗季。
「あれっ。どうしたのかしら。階段から上に行けないわ。」
千紗季は階段で体を押したり引いたりしているが、一向に前進しない。弾かれる千紗季。「おかしいわ。見えない壁でもあるのかしら。ドンドン!」
千紗季が一階と階段の境界線を叩くと音がした。千紗季はさらに叩くのを超えて殴り続けた。
『ドンドン、ドンドン。』
「止めてください!ドカ~ン!」
受付嬢が千紗季のところにやってきて、鬼の形相で、弾き飛ばす。
「ぐわあ~。アタシのどこが悪いのよ~!」
飛ばされながらクレームをつける器用な千紗季。
「わがまま言ってはいけませんよ。」
柔らかな言葉とは裏腹に、受付嬢は千紗季にパンチの連打を浴びせて、哀れな千紗季はブラックアウトした。
「う、う、う。ここはどこ?アタシは真北千紗季。頭はクラクラするけど、脳細胞は正常稼動してるわね。あれ?アタシ、何着てるの?」
気づいたら赤いジャージ姿になっていた千紗季。
「お目覚めか。当然のごとく、地底に戻ってきたな。これで、めでたくソコドル誕生日のお迎えだ。」
「勝手なこと、言ってるんじゃないわよ。地上への訴えがダメなら家に帰るわ。」
「誓約書にサインがあるから、契約成立だよ。」
「ええっ?そんなの、アタシの意思に反してるんだから、まったく無効よ。」
「帰りたいなら帰ってもいいぞ。その代わり、莫大な違約金を一生背負うことになるだけだ。生命保険金でも賄えきれない額だからな。これを見ろ。」
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