第2話

 さて困った。

 寒空の下紙の裏にたくさん、たくさんの下手な絵が踊る。ようやく買えたタバコに火をつけようとすれば嫌がられ、逃げてしまおうとすれば馬鹿力で羽交い締め。そういえばケーキの入った紙袋は中はどうなっただろう、振り回したけど。

「オーケー、探せばいいんだろ……」

 深く深くため息をつく。

 白人は何か言っているがその手からボールペンを奪い取り、雲とゴミ袋に丸をつける。

「探す!

 ルック……あーこれ、ユー、ニード? ユー、ロスト?」

 どうにか小一時間で判明したそれだけを繰り返すと、白人はぱあっと笑顔になってまた十字を切った。

 でもこれってなんだろう。


 とりあえず近くのゴミ捨て場に行ってみる。

 ゴミ袋は回収日でもないので無かったが。

 あとこの雲ってなんだ。絵の描かれた紙を見る。それとも何か違うもの……でも雲にしか見えない。浮かれたおそらく軍人たちとすれ違いながら唸っていると、急にどやどや騒ぎになる。

 白人が軍人の胸ぐらをつかんでいた。

 いやなにしてんの!?

「うわあ!! おまえなにしてんの!!!!」

 引き剥がそうとしたら誰かの腕が顎にクリーンヒットした。とても、痛い……というところで俺の意識はとんだ。


 目が覚めると児童公園のベンチに寝ていた。

 白人が(無傷だと? どんだけ強いの)申し訳なさそうに湿った布らしき物を顔に押し当てた。どうやら顎は腫れているらしい。

 いいよ、と俺はため息をついて布を押し返し起き上がる。

 ツイてない。

「なんで……あいつらと喧嘩なんか」

 と、俺が言うと、白人は嬉しそうな笑顔になって、濡れている布を広げてみせた。

 いやなにそれ。

 よく見ると布というより……毛?

「なんこれ、サンタのヒゲじゃんさっき」

 軍人が仮装していたサンタクロースの。

 濡れたままのそれを白人は自分の顔につけた。いやそんなもん欲しかったの? と俺がドン引きしていると白人は口を開いた。

「ごめんね、あいつらが拾ってたらしい。

 あ、これ通訳機になるんだ」

 ……ドラえもんかお前は。

「ごめんついでにもう一つ探すの手伝ってください」

「遠慮ねーな欧米人!」

「とても急ぐます! お願い!」

 とまた十字を切り祈りだす白人。いやもう……

「ここまできたら良いけどさー!

 腹減ったら帰るからな!!」

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サンタクロース捕獲 きゅうご @Qgo

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