サンタクロース捕獲
きゅうご
第1話
空港というか基地のそばで一人暮らしをしている。
騒音には慣れないものだ。
俺は空を見上げてうんざりと轟音を見送った。今日はバイト先のケーキが一つどうしても売り切れなくて、持ち帰るのは俺になってしまった。なかなかツイてない日だ。家に帰っても一人。親は弟のとこの孫に夢中で電話すらかかってこないだろうし、友人のいない自分には本当に年末のこの辺りの日々は孤独だ。
駅前の曲がり角のタバコの自販機が三つ並んでいるとこに立ってさあ今日はどれにしようかなあと(銘柄にも味にもこだわりがないというか、どれも同じ味に思えるのにタバコは辞められない。なにか精神的な問題があるのかもしれないな、と笑うしかない)迷っていると曲がり角から腕が伸びた。
は?腕?
ひるむ間に腕を取られて建物の隙間(そんなものがあったのか)に引っ張り込まれる。その瞬間
「いたか!?」
「いない!
真田おまえなんで手錠外したんだよ!!」
「外してないっすよ!?
あいつがどうやったのか……」
「もういい早く追うんだよ!!!」
どたどた三人のおまわりさんが走って行った。
とてもやな予感。目の前の、どうやら欧米人らしい白い肌に白い短髪の青年(やたら背がでかい)が震えながら俺を抱きしめ……もとい
「はっは、な、し」
口元を覆い息を止めんばかりに俺を羽交い締めている腕をバンバンと叩いた。
ぱっと腕が離れると咳き込む俺の肩を掴み、欧米人(たぶん)は何か小声で焦った様子でまくし立て出した。いや英語ですらないな? 英語の成績すら悪かった俺にどうしろと。
というかさっきのおまわりさんに……と隙間から出ようとすると、その白人は何を思ったか十字を切って跪いて俺の靴にキスをし出した。
いやきもい!?
とそこで思いつく。
「あんたそのカバンに紙とかないの?
あー……ペーパー、ペン、ライト……ライティング」
片言でいうと、白人はぱあっと笑顔になってカバンを開けた。
やたら大きなベージュの革バッグで、中には分厚い書類の束? まるで慌てて詰め込んだようなそれらを何枚か取り出し、ボールペンで何か書き出した。
「いやあんたの国の言葉はわかんねーっての!」
思わず紙束を叩く。そこには見たことのないアルファベットかもあやしい羅列。
白人はなるほど、という顔で(表情がくるくる変わってわかりやすい)背を丸めてこんなものを書き出した。
リボンっぽいもののついた箱。
ごみぶくろ
さんかくとまる
……雲?
「おまわりさんはなんだったんだ、あんたを追ってたんじゃ……あーえと
ポリスメン、ポリスメン、ホワイ、ゆー……」
と、下手くそな新幹線……いや飛行機かこれ、を書いて何かまくし立てる白人。
そして雲に丸を幾重にも書いて強調する。
いやいやいや
もしかして脱走軍人じゃねーよな?
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