第2話

「んうぁっ」

 デスクから転がって、落ちた。

 目覚める。

 ぼうっとしていて、頭が動かない。

「あはははは」

 誰か、笑っている。

 その顔を見て、記憶が戻った。

「わっ、笑うなっ」

 同期の男性。

 同じ職場。

 というか、採用面接の待合室で一目惚れして、いま、同じ会社にいる。

「デスクに突っ伏して寝てるのに寝返りって。あはははは」

 はずかしい。

 すきな人の目の前でローリングデスクかましてしまった。

「大丈夫ですよ。夜勤なんて片方起きてれば成立するんですから。ほら、仮眠室連れて行ってあげますよ」

 差し出された。

 手。

「て」

 手を、眺めた。

「どうしました。手に何かついてますか?」

「ん、いや、なんか」

 何か、あっただろうか。

 思い出せそうで、思い出せない。

「夢かな。なんかあったようで思い出せない」

「そりゃあ、寝返り打つほど熟睡してれば夢ぐらいはみるでしょう」

「だよね」

 差し出された手を、握った。

 どんな、夢だったろうか。

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