第2話 全ては鬼を殺すため……
な目を瞑るとあの忌々しい記憶が思い浮かぶ。
聞き慣れない外の喧騒、燃え盛る室内の炎。そんな中俺は物置に身を潜め、両親の四肢が引きちぎられる光景をただ眺めるだけだった。
誰も助けに来ない、否。助けに来たってあんなのどうすることもできないだろう。
見たことのない生物であり、想像したことのある怪物が実物となって俺の目の前で両親を殺した。
「鬼」それは幼かった俺にトラウマと復讐心を与えた。
あの日誓った。
もうこれ以上奴らに好きな人を殺させはしない、と。
それから俺は、遠い親戚の爺さんに引き取ってもらった。
両親の葬式の日に、周りからの哀れみの的となっていた俺に唯一手をさしのべてくれた、恩人であり、後に師匠となった人だ。
爺さんのもとで八年ほど暮らし、16歳となった俺、
<hr>
ピピピピピッッピピピピピッッ!
聞き慣れた高い音が、瞼の重い早朝から鳴り響く。
アラタは体の怠さを飲み込み、恋しき布団から体を抜け出す。辛いが、習慣だし慣れている。
軽く背伸びをしながら立ち上がり、枕元に置いてある鳴りっぱなしの目覚まし時計の頭を軽く叩く。
時計の針は4時を指していた、日常的な暮らしをする人にとって4時はまだ起きる時間ではないだろう。しかし、アラタは習慣である早朝トレーニングにこの時間から出かけるのだ。
汗だくの白地Tシャツを脱ぎ捨てタンスから運動用のシャツを出し、クローゼットの中から白いメッシュタイプのジャージ上下一式も取り出す。
着替え終えたアラタはまだ朝日が辺りを照らさない暗い夜のような朝の町に向かう。
木刀を持って。
「今日は温かいな、昨日の寒さが嘘のようだぜ」
季節は冬が幕を下ろし、代わりに春が姿を見せ始める頃。
俺、草薙アラタは環境がガラッと変わったこの学園都市マナティクトで学生として暮らすこととなった。
この学園都市マナティクトに入るには、二つの条件があった。
一つ目は高い、
アラタのマナはレベル2。合格基準である。
二つ目は自分の意思でこの学園都市に入学する事を決めることだ。
俺には、あの時、あの瞬間に決意した。
鬼に大切な人を殺させないと。
その為には力がいる、これは絶好のチャンスだと思った。学園都市マナティクトに入ると、鬼を対象にした実践訓練やマナを研究する機関が設けられる。
俺はここでマナを知り、鬼を倒す力を習得する。だからこそ入学したのだ。
<hr>
ケイトは霧がかった沿岸を回るコースを走る。そして目的地に到着する。
「着いたっ……はぁ…はぁ…」
ここは人気もなければ何もない、俺のトレーニング穴場スポットだ。ここまで来るのに随分と走る。
それは、この学園都市は広大な面積を持つからだ。やはり国際協力機関だからというべきか、その面積は一つの町とも言えよう。
全ては災害をもたらす鬼を殺すためにここまでするのは、それほど鬼が国に、世界にとって驚異的であることを証明つける。
俺は肩にかけていた収納バックから重量木刀を取り出す。
これは、爺さんからのお下がりで中々の代物だ。
アラタは朝日に向けて木刀を構える。その姿は様になっていた。
「ふぅ……………!」
呼吸を整えたアラタは勢いよく木刀を振る。
上段切りや中段突き。縦横無尽で太刀筋がしっかりと木刀を舞うように振る。
これもすべて師匠である爺さんの見よう見まねから始まった事だった。今では完璧とはいかないが、
「ハッ!ハッ!」
アラタの雄叫びが木刀を振る度に町に響き渡る。汗が飛び散り、筋肉も疲れてきている。だがアラタの集中はと切ることもなかった。
<hr>
そんな姿を、一人の少女が物陰から覗いていることも知らずに。
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