第3話 美少女とラグビーボール

「おじちゃん何してるの?」突然、背後から聞こえた声にスズキは動揺した。動揺したというよりはまたしてもフリーズしたに近い。スズキは今年32歳になった。32歳は非常に微妙な歳である。若者と呼ばれるには老けすぎているが、おじさんと呼ばれるには若すぎる。自分の属性をどちらにするか定義が難しい年頃である。マーケティング的には20歳〜34歳男性は「M1」層とされ若者扱いである。だが主観的な意見としてハタチの自分と32歳現在の自分が同じメンタリティとは到底思えない。ハタチの自分は箸が転んでもおかしく、今の自分は箸が転んだら怒りすら覚える。などと、どうでもいい理屈が頭の中を駆け巡る時間は0.7秒。振り返るとそこには美少女がいた。やわらかい、ラグビーボールを模したぬいぐるみのラグビーボールを小脇に抱えた美少女が怪訝な顔をこちらに向けていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る