第2話 逃走と逃避
スズキの眼前には膨大な水量を誇り、一般的には一級河川と呼ばれる川が揺蕩っていた。鴨が着水と離水を繰り返し、バシャバシャと音を立て、背後からは子供の笑い声が聞こえる。川面には夕日が映え、キラキラと眩しい。
一級河川と二級河川には何の違いがあるのであろうか。何をもってしてクラス分けが行われているのであろうか。スズキは国土交通省の仕事に想いを馳せていた。現実逃避である。パンツの中にはイカがいる。
スズキは施設(布団)から逃げ出していた。生のイカをパンツの中に入れて7時間動くことを許されない実験から逃げ出していた。荒唐無稽で傍若無人、邪智暴虐の王との契約をスズキは締結してしまったにもかかわらず、スズキは逃げ出していた。しかし、スズキにも良心はある。約束や契約を破ることは極めて悪事であると認識している。スズキは良心の呵責と現実の責任を天秤にかけ、イカをパンツに入れたままならば逃げてもセーフ理論を採用したのであった。イカをパンツに入れたまま、川面をぼんやり眺めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます