第3話 第二よ永遠なれ
「魔神が現れた。第一は、ここSW以外は、既に浸食を受けて生きておる者はおらぬ……」
目を伏せながら、ネルファが言う。
「何だって!……ティート、ティート応答してくれ!」
反応は無かった。
静寂。
「ユリウス、お前の部下はよく戦った。魔神なればどうすることもできぬ。ここも間もなく朽ちよう。早く第二へ」
「……」
なおも手綱を握り、天馬でどこかに行こうとするユリウス。
その前に立ちふさがり、彼女はワンドをかざす。
「お前を犬死にさせるわけにはゆかぬ。クラウディアのことも考えよ」
その瞬間、ユリウスの姿は天馬ごと消えた。
次いで、ワンドを振ると、彼女の姿も消えていた。
――――――――――
第二の結界の端に、一団がいた。
10代の少年少女と、戦士というにはやや年老いた白髪交じりの者達。
「よいか、ヘリオガ、マクシミヌス。第二の端のこの洞窟が、全ての結界の外につながる洞窟だ。ネルファ様が結界に穴をあけてくださっている今しか通れない。早くゆけい」
白髪の老兵が叱咤する。
「ロムルス様……でも皆さんを置いてはいけないですよ。僕たちも戦います!」
少年が抵抗する。
次の瞬間、老兵は、彼の頬を殴っていた。
彼は腰を落とし、頬をおさえながら、信じられないという表情で老兵を見る。
老兵の二つの眼から、光る何かが溢れていた。
「ダメだ……お前たちは、未来そのものなのだ。お前たちがここで行かねば、希望が潰える。それはわしらにとって死ぬよりも苦しい……わかってくれ」
少年は頷き、隣の少女に促されると、洞窟に入っていった。
この集団の所々で、同じようなやり取りが繰り広げられている。
「ネルファ……」
ユリウスが隣にいるネルファに何か言いたげな表情をしている。
二人は、丘の上から、別れの儀式を眺めていたのだ。
「ロムルスはな、十年前の戦いで息子を失っているんだ。その代わりなんだろうかな、アカデミーで、若い坊主共の面倒をよく見てくれて……」
「違う、そうじゃない。敗北した第一の俺が言えることじゃないかもしれないけど、全員撤退するわけにいかないのか? 魔神相手なんだぞ、十年前だって……」
「それはできない。第二には第二の役目がある。『なるべく敵の足止めをする』というな……ほら、ウチのやつらみんな輝いてるだろ?」
「あ、あれは聖騎士の?」
ユリウスは自分の目を疑った。
第二の残った全員の姿が輝いている。
まるで、聖騎士の力を解放した時の自分のように。
「疑似聖騎士とでもいう感じかな。ルキウスのところが開発した一時的に聖騎士の力を得る腕輪の力だ」
「疑似聖騎士?」
確かにあの数の聖騎士なら魔神に抵抗することもできるだろうが、聖剣も無しに体が持つのだろうか? ユリウスの疑問が彼女にはわかったらしい。
「そうだ。あれを使ったが最後腕輪に力を吸われる。死ぬまでな」
「そ、そんな……」
「彼らは覚悟の上なんだ。そして私もな。最後にお前と話せてよかったよ、ユリウス……じゃあな」
ワンドを振る。
ユリウスの姿が消えた。
「最後くらい甘えればよかったかな。クラウディアに気を遣い過ぎたか」
一人ごちる彼女。
しかし、いつまでもこうしている訳にはいかないと、決意の目をして隊のものの中心に降りると彼女は言った。
「よし、野郎ども! 死ににいくよ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます