第22話 SMS
< 4月2日(火)>
◆『やっと既読がつきましたね! 無事で何よりです』
ハリヤマだ。
たった今既読がついたのをハリヤマも確認したのだろう。
俺は返信を返した。
◇『ハリヤマか?』
◆『針山です。お疲れ様です』
お疲れ様とはふざけたセリフだ。
相変わらず非常識な奴だ。
◇『いったい何がどうなってるんだ(怒り) 説明しなさい』
俺は怒りの絵文字とともにメッセージを送信した。
次の返信が届くまでは少し時間がかかった。
◆『ご心配ご迷惑をおかけし申し訳ありません。
実は、トラブルが発生しました』
◆『本来であれば、タカハシさんには単純なVRゲームのテストプレイをしていただく予定だったのですが、プログラミングのミスと、機器のトラブルが重なった関係で、タカハシさんは、そちらの世界に行ったきりになってしまっているのが現在の状況です』
◆『“アイランド”は、極限までリアリティを追及したオープンワールドを再現したプログラムなのですが、そのゲームモードは、実は二種類開発しておりました』
◆『ひとつは、ごく単純なVRモードです。
現在の日本にも、数多く見られ始めている類のもので、ヘッドセットディスプレイを装着することで、主に視覚と聴覚を刺激し、あたかもゲームの世界に入り込んでいるような感覚を楽しむものです。
私共はこれを“レベル0”と呼んでいました』
◆『そしてもうひとつは、我々が独自に考案したオリジナルのモード、“レベル1”です。
先進技術を駆使したハイクオリティモードです。
しかしこれは、まだ開発途上の段階で、なおかつ、現代の一般的なテクノロジーを超えたものです。
“オーバーテクノロジー”です』
◆『人間の前頭葉と大脳皮質を中心に、ある種の電磁パルスを膨大に放出することで、意識階層構造を解析し、バーチャル空間に再現することができるのです。
これを活用することにより、心と身体全てが別世界に転移したかのように動作させることが出来るシステムなのです』
◆『タカハシさんには、レベル0、つまり単純なVRモードを試していただく予定でした。
しかし、実際にはレベル1が起動してしまったようです(汗汗) 』
ここまでのハリヤマからのメッセージを読み終わった俺は、怒りでスマホを投げつけてやりたくなる衝動をグッとこらえて、返信した。
◇『詳しいことはよくわからないが、今俺の目の前で起きていることはよくわかっている』
◇『とにかくハリヤマ! 俺を元の世界に戻せ! 話はそれからだ』
メッセージを送信した後、次の着信まで、まただいぶ時間がかかった。
ハリヤマからの新たなメッセージは五分後に届いた。
◆『申し訳ありません。
タカハシさんを戻す事ができません』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます