第5話 謎のLINEユーザー その3
電話の着信音が鳴り響く。
……しつこい!!
しかし、もう降参だ。
俺の負けだ。
こいつは多分、LINEをブロックして無視しようとしても、連絡がとれるまでしつこく電話を掛けてくるに違いない。
住所も把握しているという話が本当なら、家まで押しかけてくるかもしれない。
覚悟を決めて、俺は電話に出た。
「もしもし」
「あっ! タカハシさん!
やっと電話に出てくださってありがとうございます。
地球人類研究所のハリヤマと申します!」
ややトーンの高い男性の声。
「……」
「タカハシさん、無断で個人情報取得した件は本当に申し訳ございませんでした」
「それなんですけどね、いったいどこで俺の個人情報を入手したんですか?
広告クリックしただけで名前と電話番号がわかるなんて事あるわけないですよね?」
「いえいえ、先ほどLINEで申し上げたとおりです。
タカハシさんが当方の広告にアクセスされた時点で、当方のサーバーコンピュータはタカハシさんの情報を取得することができるのです」
「そんなSFみたいな話有り得ないでしょ。
俺のパソコンにウイルスを仕込んだか、あらかじめ前からハッキングしていたか、どっちかでしょ?
ハリヤマさんって言いましたっけ?
俺もITは全然詳しくないから偉そうなこと言えないけど、少なくともジャパネットたかたの通販で初めてパソコン買ったような無知のオッサンではないから」
「いやぁ、タカハシさん。
疑問に思われるのはもっともでございます。
私もさきほど上司から説教された次第でして……。
現在の一般的なIT技術水準では、個人情報の取得や取扱い、及びネットリテラシーについてはタカハシさんの言われるとおりの状況だと思います。
ただ、お見知り置きいただきたいのですが、当社の先進的技術は、一般社会のIT技術を超越していることは確かでございます。
もしよろしければ、一度来社いただければ、それを証明することができるのですが……」
「来社って、おたくの会社に来いってこと?
本当に時給二五〇〇円で仕事募集してるのかい?」
「もちろんでございます。
あっ、時給がご不満でしたらご相談に乗りますよ。
曜日や時間についてもこれ然りでございます。
タカハシさんのご希望の日にちに、ご希望の時間だけテストプレイヤーとして従事していただければと思っております。
週一でも週五でも、一日三時間でも八時間でも、ご希望に沿います。
時給二五〇〇円では安いと思われるのでしたら、時給アップのご相談にも乗らせてきただきます」
「ぇえー。本当にぃ?」
いかん、心が揺れてきた。
そんな美味しい話、この世にあってたまるか!
と思う反面、この話が本当なのであれば、失業中の俺にとってこれほど待ち望んでいた条件はない。
「どうでしょうタカハシさん。
一度来社いただいて、社内を見ていただければと思いますが。
テストプレイをしていただく開発中のゲームについても見ていただくことができますし」
「あっそうだ。でも俺ゲームとか全然しないんですよね。
それに反射神経ゼロなんですよ。
例えて言えば、スーパーマリオブラザーズの1-1で死ぬくらいのレベルですわ。
テストプレイヤーなんて務まらないと思いますよー」
そうなのだ。俺はゲームはあまり興味がないし、どちらかといえば苦手なほうだ。
最後にやったゲームはスーパーファミコン?
いや違うセガサターンかドリームキャストか。
どっちだったっけ。
「それは大丈夫でございます。
経験や技術の有無は問いませんので」
ゲームのテストプレイヤーなのに、普段ゲームを全くしない俺でも良いというのだろうか。
「一度来社ねぇ……。
ところで会社はどこにあるんですか?
あまり遠かったら通勤できない」
「当社は交通の便については優良な立地なので、通勤には問題ないかと存じます。
六本木ヒルズはご存知ですか?」
「もちろん知ってます」
「当社は六本木ヒルズ内でございます」
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