6/30 ― A Day to Remember ―
Nico
Intro
0. イントロ
「三度目の来日だそうですが、日本の印象はどうですか?」
「好きだよ。食べ物はうまいし、人はみんな親切で礼儀正しい」
「今回のジャパン・ツアーのタイトルである”A Day To Remember”には、どのような意味が込められているのですか? 確か、ヨーロッパ・ツアーではアルバムタイトルを使っていましたよね?」
「本当は変えるつもりはなかったんだ。でも、日本のスタッフとの打ち合わせのときに、ツアー初日が特別な日だってことを知って、それで変えた」
「それはつまり……」
「『あの四人』が武道館でライヴをした日。そうだろ?」
「えぇ、そのとおりです。そんな記念すべき日に、同じ場所でライヴをすることに関してはどう思いますか?」
「光栄だし、わくわくするよ」
「ところで新作のアルバムについてですが、”
「日本人は何でもかんでも意味を知りたがる(笑) 本当に意味なんかないんだけど……そうだな、偶然は特別なことじゃないってことかな。言ってみれば、この世界で起こってることはすべて偶然でしかない。そうだろ? 俺やあんたが生まれてきたのだって、ここでこうやってだべってるのだって、全部偶然と言えば偶然だ。そういう意味では、この世界のすべてが必然だと言うこともできる」
「少し混乱してきたんですが、つまりあなたはこの世界は偶然と必然、どちらだと思うんですか?」
「その質問がまず正確じゃないんだよ。俺が言いたいのは、要は偶然と必然は同じものだってこと。見る角度によって、一つのものが偶然にも必然にも見えるってことさ」
「なるほど」
「ちなみに俺は奇跡も信じるぜ。偶然が三つ重なれば、それはもう奇跡だからな。起こらないことじゃない」
「では、もし偶然そこにある壁に、あなたが偶然ぶつかったのを、私が偶然目撃したら、それはもう奇跡ということになりますね?」
「そういうことになるな。悪くないだろ? 実際、奇跡なんてものは至るところでいつも起こってることなんだよ。ただ人間がそれに気づいてないだけだ」
「何だか、随分と哲学的になってきましたね?」
「悪くないだろ?」
「えぇ。でも残念ながら時間がなくなってきたので、最後に一つ。日本のファンにメッセージをお願いします」
「俺たちのCDを買ってくれ」
「悪くないメッセージですね。今日はありがとうございました」
「ありがとう。あんたも悪くない仕事したよ」
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