第30話「その頃の世界中の動き」

 Side ドラグニア帝国 ファフニル 皇帝


【ドラグニア帝国帝都、帝城会議室内】


 日本と開戦してからどれだけの時間が経過しただろう。

 

 どれだけ「許可する」と言い続けただろう。


「まさかこんな事になるとは……」


「軍部は何をやっている!?」 


 戦況は日に日に悪化していった。


 それだけでなく武力で押さえつけていた属国が反乱を始めつつあるようだ。


「コスモレシアやブロッサムなどの他の列強も動きを見せ始めている――日本はバルニア王国との戦いで疲弊していた筈ではなかったのか――」    


 と恨めし気に誰かが言う。


 確かに日本はバルニア王国との戦いで疲弊していた。

 その隙を狙って戦争を仕掛けた。

 当初は物量で押し切れる筈だった。


 だがそうはならなかった。


 突入したのは果ての無い戦い。


 戦力をどれだけ搔き集めても。

 どれだけ投入しても戦力が消え去る。


 そこにコスモレシアやブロッサムなどの列強国の動きや属領地の反乱だ。


 この戦い、先が見えたとファフニル皇帝は思った。



 Side バルニア王国  臨時国王メルシア


【バルニア王国城内、私室にて】


 メルシアは副官のリアラと一緒に連日届けられる日本とドラグニア帝国との戦いを見ていた。

 ある程度予想通りの流れではあるが、日本は想定外に強すぎる。

 よくもまあこんな国に我が国は戦争を吹っ掛けた物だとメルシアは思った。


「ドラグニア帝国は終わりだな。どちらにしろ、二度と大国の地位には返り咲けんだろう」


 独裁国家の屋台骨は脆い。

 力による統治は更に強い力の統治によって滅び去る。

 バルニアも同じく恐怖政治や力による弾圧統治をおこなっていたが、アブレア王もそれを恐れていたのかどうかは、もうメルシアには知るよしもない。

   

「しかしドラグニアもこのまま黙って滅び去るつもりはないだろう」


「と言うと?」


「決戦を仕掛けるつもりかもしれない」


「勝てますか?」


「勝ったところでどうなると言う段階に来てるがな」


 バルニアは本当に奇跡の状態で存続が許された。

 日本との国交が出来て一部日本製品が流れ込んできている。

 日本の兵器に関する情報も今更入って来たが控えめに言って化け物クラスだ。

 しかもまだ発展し続けているらしい。


 ドラグニア帝国にも古代兵器はあると思うが――日本もバルニアとの教訓を活かしてより強い兵器を投入するつもりらしいと囁かれている。


「日本ってこの世界に来る前は何と戦ってたんですかね」


「古代兵器すら破壊するような連中だ。それ相応の連中と戦っていたんだろう」


 メルシアの言う事はある意味的を得ていた。

 まさか宇宙人の戦闘機械――巨大円盤とも戦っていましたなど、ある意味ファンタジーよりもファンタジーすぎる。


 

 Side アイナ王女


【ユリシア王国王都・王城内にて】


 アイナ王女は何時ものように姉のソフィアと会話していた。

 話題はもっぱら日本についてだ。


 日本と交流してから良い事尽くめ。


 市民の生活や物流、戦災復興も急激な勢いで進み、日本の製品や日本の工場も一部ユリシア王国で建造されている。


 日本とユリシア王国はもはや切っては切れないパートナーとなっていた。


 ドラグニア帝国との戦いも苦戦はしているらしいが、それは相手の物量にであって、戦いその物は優勢。


 属領地の反乱や他の列強国も動いて段々とドラグニア帝国は日本どころではなくなってきているのだ。


 ユリシア王国や日本に恩がある国々も日本を全力でサポートしている。

 ユリシア王国軍も他の国と連合を組んで他の列強国が変な動きを見せないように睨みを利かしている。

 

「しかし、とんでもない国だな日本は」


 と、ソフィアは言う。

 

「はい。逆に良いことだらけ過ぎて不安になって来ますね」


「全くだ――父上や母上も同じことを言っていた」


「まあ戦争で疲弊していた日本も段々と持ち直しているようですし――魔法騎士の育成やマジックメイルの導入と軍の機械化を急ぎませんと」


「軍の機械化か……反発の声が多そうだ」


 ソフィアは悩む。

 軍の機械化など昔は大笑いされたが日本の軍隊は魔法など使っていない、純粋科学による機械による軍隊であり、バルニア王国や古代兵器すら破壊し、ドラグニア帝国相手に無双しているような状況である。


 だが人間、正しいからと言ってはいそうですかと受け入れられる程単純な生物ではない。


 そこで拙速案としてブロッサム王国のように魔法騎士の育成、コスモレシアのようなマジックメイルの導入などを考えた。


 軍隊はどんな感じになるのか今一軍部の人間には想像がつかなかったが、そこは日本のサブカル作品が大いに役立ったと言う。

 特に人類の脅威相手に少女が戦う系のお話とかだ。


 更にユリシア王国には――王都解放作戦前のヘルダイバーズと呼ばれる日本のパワードスーツ部隊の活躍も印象深く、それに憧れる人々もいたのでマジックメイルの導入や魔法騎士の育成が熱心である。

 

「重要な事なので今迄伏せていたが、近々ブロッサム王国やコスモレシアの人間がこの国に尋ねてくるようだ」


「ブロッサム王国とコスモレシアですか?」


「うむ、目的は日本らしい。この国には日本の自衛隊がまだ残っているからな。それ目当てでもあるんだろう。他にも様々な国が日本との仲介を我が国に頼んできているらしい」


「ユリシア王国もとんでもない国になってきましたね」


「ああ、全くだ」


 と、王女姉妹は語らう。

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