第29話「楽園から追われしもの」

 Side アティ


=スカイピア・評議会=


 アティの行動は早かった。

 早速評議会に日本に対する姿勢に上申を申し付けたのだ。

 だが彼女は若く、楽観的過ぎた。


 呼び出された評議会の議員が集まる場所。

 アティにとっては雲の上のような人々たちだ。

 彼達はアティに現実を突きつけた。


「日本へ対する姿勢を変える事は出来ない」


 と。


「なんでですか!?」


 アティは納得出来ないと叫び声をあげる。


「日本はこの世界の秩序を乱す存在」


「放置すれば必ず脅威になる」


「ゆえに滅ぼす」

 

 との事だった。


「そんな説明で納得できません!! どうして日本が秩序を乱す存在になるのですか!?」


 アティはまるで人間ではない何かと会話しているような気分になったがそれでも我慢強く説得を試みる。


「もうよい、この者を拘束しろ――」


「ッ!!」


 その一言を聞いてアティは反射的にこの場から逃げ去った。



 =スカイピア・格納庫=


 スカイピアの事はアティは熟知している。

 逃げ場所はない。

 スピード命で真っすぐ格納庫に向かう。

 

 こうした事件は中々起きないので市民や兵士も何をしていいか戸惑っている。

 悪く言えば平和ボケしているような状態だ。


 そして自分の愛機に飛び乗り、アティは発進する。



 =スカイピア領空圏内・可変戦闘機内部=


 アティの搭乗機体、可変戦闘機に乗る。

 不思議と追撃機や迎撃がなかった。


『まさか評議会に逆らう人間が現れるとは思いませんでしたね』


「え? なにこのAI? 貴方は誰?」


 謎のAIの存在に驚くアティ。

 戸惑いながらも一目散に逃げる辺りは流石だろう。  


『私はアース。キャプテン・アース。しがない宇宙飛行士です』


「宇宙飛行士がこんな真似してるの?」


『はい。その通りです。日本と同じくこの世界に迷い込んだ存在です』


「日本と同じくね――聞きたい事は山程あるけど、どうして私を助けたの?」


『おや、お気づきでしたか』


「私もそこまで馬鹿じゃないわよ」


『助けたのは本当に気紛れの類です。ただ単純に興味を示しただけです。本の世界に手を突っ込んで物語を変えてみたかったみたいな……上手い例えが見つかりませんね』


「いいわ。とにかく助けてくれてありがとう」


『それよりも行くアテはあるんですか?』


「日本しか思い当たらないわね」


『いわゆる亡命ですね。分かります』


「まあそうなるわね」


『しかし日本には楽園〇放と言うアニメがありますがまんまソレな展開ですね』


「は?」


『すいません、暇だった物でつい……』


「変なの……」


 このAIは変だが何故だかアティはとても好感を持てた。

 ともかくここから先をどうするかが問題だ。

 行くアテなんてない。


 思い当たるのはあの自衛官の元ぐらいだ。

 彼に頼んで亡命しようかなぐらいしか思い当たらない。


 無理ならその時はその時だ。

 キャプテン・アースと一緒に逃亡しようと思った。

 

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