第28話「アティと密会」
Side 日本 航空自衛隊 レイヴン1 川西 幸斗 一尉
シェリスカ王国。
航空自衛隊基地。
まだ月日がそれ程経ってないので臨時基地のような扱いだ。
最初はシェリスカ王国の人々との壁を感じたが、何度も何度もドラグニア帝国を撃退し、スカイピアの連中を追い払っていたら打ち解けてしまった感がある。
そんな俺は上の指示でアティと密会することになった。
もうこれ密会じゃないよねと思いながらも俺は待ち合わせ場所に行く。
と言うのもスカイピアの情報が少しでも多く欲しいからだ。
一応スカイピアの住民はこの世界の秩序の番人だと思い込んでいるらしい。
そんなスカイピアの住民を束ねるのは評議会と呼ばれる組織だそうだ。
そこら辺は置いておいて問題はアティだ。
「あなたスカイピアに来ない?」
「断る」
シェリスカ王国の街中。
中世ヨーロッパ風、WEB小説界隈ではナーロッパとか言われる街中の中でスカイピアの住民であるアティと出会った。
気の強そうない長い金髪の青い瞳の少女で胸が大きめ。
服装はシェリスカ王国の国民に合わせている。
まあ小奇麗ではあるが。
町娘に変装した貴族の少女感がある。
周辺にはシェリスカ国民に交じって自衛隊の面々などが見張っている。
更に盗聴器越しには日本政府のお偉いさん型がいた。
「やっぱりそう言うと思った」
「殺しに来た相手にスカウトするとか正気じゃないぞ?」
「いいじゃない。評議会もジエイタイだっけ? をどう思っているか知らないけど――危険視していると思う。それにそちらにある宇宙船の事もね」
「ッ!?」
悲し気に言うアティ。
それよりも問題なのは宇宙船の事も知られている事だ。
と言うか宇宙や宇宙船の概念も理解しているのか?
「本当はね。私もスカイピアのやり方は変だと思っている。でもね、スカイピアはこの世界の法と秩序を守る存在だって――ジエイタイは危険な存在だって教えられているの」
と、辛そうに語るアティ。
根が優しいのだろうか、それとも演技なのかは分からない。
「悪いが仕掛けて来たのはそちらからだ。それにそっちがまだ仕掛けてくる以上、迎撃する」
「そうだよね。それが普通よね――決めた」
「うん?」
「評議会に掛け合ってみる」
「おい、無謀な真似はやめろ。それにロクな事にならないパターンだぞ」
「でも――」
その評議会と言う連中はどう言う奴達なのかは分からないがロクでもない連中に思えた。
そもそも末端の少女の一声で止まるような連中なら最初から攻撃を仕掛けては来ないだろう。
「私この任務につくまであまり外の世界なんて知る事もなかった。ずっとスカイピアにいて、ここが世界の全てなんだと思ってたの」
アティは「だけどね」と言葉を続ける。
「分からなくなってきてるの。スカイピアのやり方に」
「……」
「アナタも本当はオカシイと思ってるんでしょ?」
「それは……」
俺はどう言えば良いのか分からなかった。
「優しいのね。あんだけ殺し合った相手なのに」
「え?」
「顔に分かり易いぐらいに出てたわよ?」
「……そうか」
「じゃあ……行くわね――」
「ああ。死ぬなよ」
引き留める事が出来ないように感じた.
仮に引き留めたとしても何と言えばいいのか分からない。
が、ここで何も言わないのも薄情な気もしたので咄嗟に出た言葉がこれだった。
そう言うとアティはキョトンとして笑いはじめる。
「あなたってやっぱりおかしいわ。じゃあね」
笑いが収まったアティはそう言って立ち去った。
俺はアティの背中をただ見つめる事しか出来なかった。
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