第27話「その頃のドラグニア帝国、スカイピア」
Side ドラグニア帝国 ファフニル 皇帝
「失敗でしたな」
「バルニア王国の連中も中々粘りますが――」
「問題は二ホン国のジエイタイです」
「何が軍隊ではないだ!! バルニアの古代兵器との戦いで消耗しているとは言え、我が軍の被害は甚大だ!!」
「もしもこのまま態勢を建て直したら脅威になるぞ!?」
「分かってはいる。だが敵は二ホンだけではない。ブロッサムやコスモレシアの連中もいる」
帝国の中枢部の大広間の会議室で大人達が戦争の会議をしている。
僕は子供の帝国の皇帝。
戦争を止めたくても止められないお飾りの皇帝。
父や母の死因は分からない。
きっとこの国を維持するための邪魔者として暗殺されたのだろう。
ドラグニア帝国は戦争を行わなければ生きていけない病に掛かっているのだ。
だから平和を訴えた父と母は神の裁きとして、邪魔者として消されたと考えるべきだろう。
そしてお飾りの皇帝である自分が誕生した。
現在この国は二ホンと言う転移国家と相手しているらしい。
そしてその軍隊が想定を超える強さを持っている国で皆、大慌てで会議しているようだ。
正直に言うと滑稽だった。
自分から相手が弱いと決めつけて、必ず勝てるからと思って戦いを挑んでこの有様なのだから。
どうせ負けそうになったら自分を生贄して国家を存続させるのだろう。
このまま滅びればいいんじゃないかなとすら思ってしまった。
「殿下、何がおかしいのですか?」
どうやら表情に出ていたらしい。
その事を尋ねられてしまった。
「いいえ、別に。僕はお飾りの殿下ですから――」
「殿下、口が過ぎますぞ?」
「口が過ぎればなんです? 代わりの子供を殿下にでもしますか? ああ、どうぞ、続けて会議してください。「はい」しか言えない殿下ですから」
視線は様々だった。
哀れみの目はごく少数。
憎々しい目で見る目の方が多い。
そんなに気にくわないなら自分が皇帝を名乗って勝手に戦争すればいいのに。
自分など乱心してなさるなどと適当に理由をつけて幽閉すればよいのに。
どうしてそれをしないのだろうか。
会議はあれこれ言いながら結局は軍備増強で話が纏まった。
それしか決められないのかこいつらは。
「はい」しか言えない自分と何が違うのだろうか?
☆
Side スカイピア 軍人 バルト
軍の話題は日本の事で持ちきりだった。
評議会もそうだ。
彼達は自分達を世界の管理者、秩序の担い手を名乗っており、そのための活動をしている。
そこに邪魔者が現れた。
名を日本。
我々に匹敵する軍事力を持ち――今もなお、その軍事力の増強を進めている。
実際先のバルニアとの戦いは衝撃的でもあった。
我が軍の戦闘機が撃墜されたのだから。
現在も最新鋭機を日本の自衛隊と言うおかしな決まり事を持つ軍事組織にぶつけているらしいが撃墜には至っていないらしい。
軍部の連中は日本と戦争になってでも「自分達の方が優れている」、「自分達の軍事力が強い」と言う証明が欲しいらしい。
世界の管理者、秩序の担い手などと称してはいるが実態はこんなもんである。
だが世界の管理者、秩序の担い手を国家が名乗った以上はそうであり続けなければならない。
国民を嘘をつき続けなければならない。
例えそのためにどれだけの生命を奪ったとしても。
そうでなければ維持できないところまでスカイピアはきてしまった。
上の方では日本本土への進行を考えているらしい。
そのためには先ず相手より強いと言う確認が欲しいらしいが前述したように上手くいってないようだ。
日本は強い。
それもまだ底を見せていないように思える。
送られてきたデーターだけでもそう思えるのだから実際戦ってみれば違って見えるのだろう。
一度探るために手合わせしてみた方がいいかもしれない。
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