第31話「一方の自衛隊」
Side 川西 幸斗 一尉
連日、攻勢を続けていたドラグニア帝国が最近大人しい。
偵察によると部隊を集結させ、大部隊を編成しているようだ。
上の考えは概ねドラグニア帝国は日本に決戦を挑むつもりだろうと考えている。
自衛隊側や日本政府上層部もバルニアとの戦訓を活かして最新鋭兵器を投入する心構えである。
また古代兵器を投入されたら戦況はどうなるか分かった物ではないからだ。
自衛隊、政府の上層部は間違いなくドラグニア手国は古代兵器を所有、それも複数所有している前提で物事を進めている。
それに敵はドラグニア帝国だけではない。
スカイピアの事もある。
それに他の列強国やバルニアクラスの準列強の動きが読めず、上のお偉方は苦慮している。
=シェリスカ王国・自衛隊基地・パイロット待機室=
「聞きました隊長? どうやら上は決戦に応じる構えのようですよ」
「らしいな」
川西 幸斗一尉の相棒の女性パイロット、桜木 美琴二尉が待機室で隣に座りながら言ってくる。
決戦が近い事を感じ取って自衛隊の内部では緊迫した雰囲気が流れていた。
偵察部隊の報告によるとこれまでにない大部隊が集結しているとの事だ。
幸斗は言う。
此方から仕掛けるか。
それとも相手の動きを待って迎撃するかで悩んでいると言う話も聞いている。
ただ相手の切り札の古代兵器の実力、性能が未知数なのが問題らしく、迂闊に手を出せないとの事だ。
ただ、古代兵器に妙な動きがあればすぐさまミサイルなり、砲弾なり打ち込む手筈である。
「上は古代兵器に警戒していますね……」
「バルニアとの戦いで危うく全滅もあり得たからな――君も一緒に目の当たりにしたから分かるだろう?」
「ええ、まあ」
古代兵器の恐ろしさはバルニアとの最終決戦に居合わせた自衛隊全員に大きなショックを与えている。
警戒するなと言うのも無理からぬ話であろう。
「警報!?」
「行くぞ、桜木」
話し込んでいるとアラートである。
基地が慌ただしくなった。
まさかドラグニア帝国が遂に仕掛けて来たのかと幸斗は思った。
☆
Side アティ
=シェリスカ王国・上空=
キャプテン・アースと相談して日本と亡命する事を考えたアティ。
だが何故だか川西 幸斗に会いたいと思ったのでアティはシェリスカ王国に向かった。
ドラグニア帝国が決戦に向けて備えているのも。
自衛隊はそれを迎え撃つ構えなのも把握済みだ。
「本当に大丈夫なんでしょうね? キャプテン?」
『お任せください。取引材料は沢山ありますので』
「……お人好しなのね」
『そうですか?』
「そうよ。ここまで面倒見のいいAIなんて初めてよ」
『他の人格を持つAIに遭遇した事がないのでどう返事をすればいいのか分かりません』
「まあ深く考えないでおくわ」
そう言いつつアティは搭乗機体である可変戦闘機の速度を上げる。
すぐ後ろには追手が張り付いていた。
「もうしつこい!!」
『戦闘はなるべく避けてください』
「と言っても限度が――」
攻撃をかわしながらアティは苦言を漏らす。
幾らアティの腕でも、機体性能が良くても限界と言う物がある。
それに自衛隊に助けに来てくれるかどうかも怪しいものだ――
『その様子だと上の説得は失敗したようだな』
「ユキト!? 来てくれたの!?」
黒い戦闘機とすれ違う。
『ああ。どう言う状況かはキャプテン・アースからある程度聞いている。とにかく亡命の話云々は通るだろう』
幸斗の言葉を聞いてアティは
「うわ~本当にすごいのねキャプテンって」
『これぐらいはできます』
との事だった。
ともかく今はこの場を自衛隊と一緒に切り抜けなければならない。
アティは迎撃態勢に移行する。
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