第25話「現状確認」

  ~間があいたのでこれまでの物語のおさらい~


 第三次世界大戦のきっかけとなった巨大宇宙船の撃破後、異世界「セントフライ」に日本列島もろとも転移した日本。


 そして運悪くガーデニア大陸のバルニア王国との戦争になだれ込んでしまう。


 日本はガーデニア大陸で滅亡の危機に瀕していたユリシア王国を救援すると言う名目でバルニア王国が支配しつつある極東部に自衛隊を派遣する。


 限られた戦力、ユリシア王国やバルニア王国とは明らかに異質な謎の敵に翻弄されながらも的確にバルニア王国との戦争を優位に進めていた。

 

 しかしユリシア王国とその連合国軍はバルニア王国に対して自衛隊と連携して反抗作戦を開始した。


 しかしバルニア王国の王、アブレア王は古代兵器、浮遊城を持ち出してユリシア王国とその連合国軍を壊滅させる。


 自衛隊は総力を挙げて浮遊城と対決し、異世界に来訪してから最大の総力戦がはじまる。


 苦戦しつつも自衛隊は浮遊城を破壊。


 バルニア王国の王、アブレア王は浮遊城とともに運命を共にした。


 そしてバルニア、ユリシアや日本、連合国に対して和平への道をとり、日本は異世界においての一連の騒動にようやく一息つくことができたのであった。



 Side 日本国 直枝・H・和矢、総理大臣


 直枝総理は官邸で様々な指示を飛ばし、情報を集めていた。


 日本国は戦争からまだ復興しきれておらず、各地にその名残の廃墟や核兵器による汚染地帯が残っている。

 

 まだまだ復興には程遠いと言うのが現状であり、最大の悩みの種はまた戦争の影がちらついていて、更に言えば謎の敵について未だに正体が分からないと言うところだ。


 そんな中で会議室で主だった官邸閣僚が居並ぶ中で官僚の一人が言う。


「長らくの間、アンノウンと呼ばれていた連中の正体が分かりました」


 とのことだった。


「ごく限られた一部の方々には先立ってお伝えしていましたが、彼達は自分達を天空の民、スカイピアの人間であると言っております」


「それで、我々に襲撃してきた理由とは?」


 再度確認するように誰かが尋ねる。


「捕虜からの話を統合した結果、謎の勢力である我々の実力を確かめるために襲撃したとしか――」


「たったそれだけのためにか?」


「より厳密に言えば謎の敵がいるから出世のために攻撃しようと言う――俄には信じられず、何度も何度も聞き取り調査した次第です」


「だろうな。思考回路があまりにも短絡的すぎる」


 と、防衛大臣の鬼塚が言った。


「その裏付けの一つとして自分達の科学力――この場合は軍事力でしょうか――とても自信があるようでしてペラペラと喋ってくれて逆に罠を疑いました――」


「それで空自や海自に頼んで調査を出した結果が――本当だったと?」


 報告する官僚の気持ちを代弁するように直枝総理は尋ねた。


「はい。その通りです――」


「……ともかくスカイピアの事は厳重に監視し、機密情報として扱ってまだ知らせないでください」


 続いて直枝総理はこう言った。


「それと日本国の全方角の調査をお願いします。人工衛星の打ち上げも急いでください」


「問題は他の国々です」


「列強国ですか」


 バルニア王国はガーデニア大陸において列強国の地位を欲しがっていた。

  

 列強国とはコスモレシア王国、ブロッサム王国、ドラグ二ア帝国、ユグラシア教国。


 この4か国を意味する。


 バルニア王国の浮遊城を目の当たりにした日本にとってはどんな隠し玉を保有しているのか分かった物ではない。


「問題はドラグニア帝国でしょうか」


 官僚の一人が言う。


「ドラグニア帝国。ガーデニア大陸北部の巨大軍事国家で、様々な国と小競り合いしている国ですね」


 皆に説明するように直枝総理が言った。


「はい。バルニア王国が列強国の地位を狙っていたのはこのドラグニア帝国が深く関係しているようでして――今となっては真偽は分かりませんが、バルニア王国が急激な軍事拡大路線に舵をとらざるをえない程の覇権主義的な国家であるようです」


「問題は山積みだな――」


 鬼塚は頭を抱える。

 

 直枝総理も肩を竦めてため息をついた。


(我々は呪われているのかね……)


 そして心の中で直枝総理は

 正直戦争など、前の世界で一生分やったがこの世界でも当分は続行しなければならないと思うと悲しくなってしまう。


 前大戦の終わり。

 巨大宇宙船のコンピューターが人類をイナゴと言ったが、何だかその気持ちが分かってしまうようでイヤな気持ちになった。


 

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