第12話「作戦会議」

 バルニア王国軍の大規模な増援部隊を確認。

陸自の偵察部隊経由でだ。


 ちなみにユリシア王国のバルニア軍の拠点は不眠不休の陸上自衛隊の働きにより調べあげられ、特に重要箇所と判断された場所からは24時間体制で出入りが監視される。

 

 ほんとうは人工衛星とかあればもっと楽なのだが他にやる事がありすぎていまだにそこまで手が回っていないのが実情である。


その後も何度か偵察が行われた。

敵の戦力把握だけではなく、進軍速度や戦場となりえそうな場所の地形データーを得るためだ。


 この偵察作戦に投入されたのは陸自のステルスヘリや空自のコールサイン、ナイトアイのパイロットと電子戦特化のXナンバーの戦闘機が投入。

 

 こうした地道な活動により敵の全体像が浮かびあがってきた。


 敵の規模はおよそ五万。

 もしも今、王都に展開するバルニア軍に合流されたら王都は陥落する。日本が助力しても被害は甚大な物になる。

 

 この援軍の撃滅その物は容易いが武器、弾薬は無尽蔵にあるわけではない。


 それに撃破すれば追い詰められた王都のバルニア軍は王都への攻勢を強め、被害が拡大すると言う意見も出た。


 また日本側としても無視できない未知の戦力も確認されているし、レイヴン隊達を含めたユリシア王国へ派遣された航空飛行隊が遭遇した謎の敵もいるため、自衛隊は慎重になっていた。

 

 しかし不安を並べ立てていては何も出来ず、最悪な事態を迎えるだけだ。

 

 まず自衛隊は王都に向かっている五万近くの援軍をどうするかを考えた。


 それを決めるために角谷陸将を始めとした自衛隊の将校達がミズリの港町から離れた作戦指揮所に集まっている。


 そこにはアイナ王女と一緒にペガサスに跨がり海を越え、傭兵の手で助けられて日本に亡命し、今は日本へのアドバイザーとなっているユリシア王国の女騎士クレアも参加していた。


「サイクロプス・・・・・・目から光を放つ巨人の魔獣か。それも一匹や二匹ではない。数十頭以上」


「他にもゴーレムなども確認されている。クレア氏によると最十級のエンシェントゴーレムと呼ばれる一種の古代兵器だそうだ。全高は軽く40mを越えている。よく創作物では現代兵器で容易く破壊されているが我々の火力が通じるかどうか・・・・・・」


「これでも列強国ではないと言うのか・・・・・・恐ろしい世界に来てしまったものだ」


「恐らく我々が――現地の呼称でレッドドラゴンを撃破したせいで敵の警戒レベルが跳ね上がったと思われます。下手に相手の様子を伺うと逆に被害が拡大する恐れがあります」


 と、口々に自衛官達が意見を述べる。 

 そこまで聞いて角谷陸将は覚悟を決めてこういった。


「ここが勝負どころか・・・・・・」


 と。


 増援部隊を撃滅するために周辺の陸上自衛隊。

 そして航空支援のために飛行隊も作戦に参加することになった。


 海上自衛隊は今回は内陸地であるためお休みであるが電子線機のサポートと支援要請さえあればミサイルによる援護が出来ると意気込んでいる。

 外宇宙テクノロジーでその手の性能も上がっているようだ。


 候補地はいくつかあったがロズ平原に決まった。

 平野であり、遮蔽物もあまりない。

 大群を進行させるには打ってつけの場所だ。


 だが角谷陸将には不安があった。


「問題は王都での敵の動きだ。この戦いの結果では敵は王都の攻勢を強めるかもしれん」


「角谷陸将は連戦になるとお考えですか?」 


「第三次大戦の時も嫌な予感ほどよくあたったものだ。まさか核兵器で汚染された地域を行軍してくる可能性を考えていたがその可能性を無視したせいで大損害を被ったからな」


 その場にいた自衛官は皆押し黙る。

 アレは誰もが想像だにしなかった。


 まさか放射能汚染区域を進軍してくるなどあの時は誰も想像はしたが「ありえないだろう」と切って捨てた。

 しかし相手はやってのけて自衛隊は大打撃を受けた。

 

 それだけではなく、予想はしていたが都合良くありえないと想像していなかった方法で自衛隊は次々と敗退した。


 自衛隊にとっては忌まわしき思い出である。


「私もその意見に賛同します」


 この場にいたクレアも角谷陸将の感に同調した。


「いくらバルニアでもこれだけの大勢力を撃滅させられたら取るべき手段はただ一つ。ユリシア王国の王都を早急に陥落させ、ユリシア王国の王族を人質にとって王都に立て籠もり増援を待つ――それしか選択肢はなくなります」


「クレアさんの意見通りになるでしょう。だから私は――」


 そして角谷陸将は奇策に打って出ることを決断した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る