第4話「開戦」

 航空混成団

 

 極西基地


 まだ日が昇ってないにもかかわらず、現在出撃準備のために基地は慌ただしくなっている。

 

「また戦争になるんでしょうか?」


 と不安げに待機室で桜木三尉が尋ねてくる。

 耐Gスーツも装着していた。

 短い黒髪でまだ年若い、モデルとしてもやって行けそうな綺麗な女の子だ。

 胸もある。


「二百隻の大艦隊が迫ってきてるんだ。砲艦外交の類いじゃなけりゃ間違いなく戦争しに来たんだろうな」


 川西二尉はスマフォを眺めながら呟いた。

  

「やっぱりですか?」


「ああ――戦争始まる前にね、ネット小説とかで日本が異世界に転移した小説とか呼んだ事あるんだけど・・・・・・今みたいな流れだと大体戦争になるんだよね」


「小説と現実の世界とをごっちゃにしてるんですか?」


「言っちゃ悪いけど、前大戦なんか宇宙から船が落っこちてきて、しかも再起動して人類抹殺しようとして撃墜したら今の状況だよ? 今更現実どうとか言われてもなぁ・・・・・・」


「そう言われると・・・・・・」


 桜木三尉は確かにそうだなと思った。

   

「ともかく、戦闘機も新型を優先的に回してくれて助かったと言うべきか・・・・・・」


「あの敵相手には過剰戦力なのでは?」


 クラウスとバルニアの初の交戦記録は既に政府や自衛隊達に行き渡っている。

 その結果、自分達の兵器が敵に対してあまりにも過剰戦力である事が判明した。

 しかし川西二尉は首を横に振る。


「相手の事を全て解明したわけじゃないんだよ? それに今は日本も疲弊しているから質で量をカバーしないとね」


「情けは無用と言う事ですか」


「そう言う事・・・・・・うん?」   


 基地の警報が鳴り響く。

 いよいよかと二人は立ち上がった。



 主立ったブリーフィングルームに集められ、基地指令の強面な桑硬(くわがた)司令から状況が説明された。

 バルニア王国が宣戦布告し、現在も艦隊を此方に向けて進行中だとの事だ。


 条文の内容はほぼ属国化せよとの内容で、これを破った場合は武力行使に出るらしい。


 テレビでもそれは報じられた。


 そして自衛隊に出動要請が掛かった。


 海上自衛隊のイージス艦や潜水艦、そしてこの極西基地からも航空戦力が派遣される事になったらしい。


 宇宙船からもたらされた最新鋭技術で兵器開発は以前よりも大幅に安いコストで製造出来るようになったがそれでも最盛期には程遠く、さらに消耗した兵力の補充も追い付かず、物量では敵が上であるらしい。

 

 しかも相手は魔法と言う未知の力を使う相手であるらしく、上層部は川西二尉と同じ懸念を持ったそうだ。

 なので基本は遠距離からの攻撃や高速からの一撃離脱戦法に務めて相手の土俵では戦わずに仕留める戦い方を徹底する方針となった。



「Fー4JCで行くんですか?」

  

「ああ、まあな」


 整備兵に呼びかけられながら川西二尉は格納庫を歩きながら愛機に近寄る。

 Fー4JC戦闘機。

 超技術でFー4戦闘機を近代化改修を施した機体で実戦配備もされた。

 別名オーバーファントム。

 長期戦にも耐えられる程の武器搭載量と運動性能を誇る。

 ステルス性は皆無であるのが難点だが。

 

 桜木一尉は一から外宇宙の技術が注ぎ込まれて製造された、ネクストナンバーの名が与えられた国産戦闘機、NFJー1ネクストファイターに乗るらしい。

 カナード翼(前進翼)でFー1カーの様な流線的なフォルムである。

 双発エンジンであり、武装のペイロードもあり、双翼にレーザーキャノンを標準装備している。

 まるでSFアニメに出て来る様な戦闘機だ。


「ガンポッドも搭載するんですか?」


「内蔵の奴だけじゃ心元無いからな」

 

 川西二尉はミサイルだけで無く、外付け式のガンポッドを搭載していた。

 これを搭載する機体は増加傾向にあり、川西二尉の場合は外付け式のガンポッドを両翼に搭載していた。


 これは前大戦で戦闘機による多様化、一回当たりの戦闘の長期戦化、質で量をカバーする設計思想などに対応する為の対策の一つとして広まった物である。


 ガンポッドも種類も様々で中には弾数は少ないが対艦用もある。新型中の新型になるとレーザーマシンガンタイプも存在し、川西二尉は実弾タイプを好んで使用した。

 

 レイブン隊として一括りにされている川西二尉も桜木三尉も黒いカラーリングにしている。

 いわゆる川西二尉の隊長特権と言う奴だ。 


 他の隊もそんな感じでF-2の改良型に乗るウォーシャーク中隊はブルーにミサイルを加えたサメのエンブレムだし、Fー15の改良型に乗るサイクロン小隊はゼロ戦を連想させるエンブレムとカラーリングだ。


 これは第三次世界隊戦が始まる前の航空自衛隊では考えられない事である。


「さてと、行きますか・・・・・・」


 川西二尉はコクピットに乗り込む。

 こうして二人は他の戦闘機隊と一緒に戦地へ出撃する事になった。

 


 バルニアのユリシア王国攻めは中々難航していた。


 バルニア王国に滅ぼされ、故郷を失った王族や兵士達などが参加して必死に抵抗を続けているからだ。


 だが龍騎士団や水上艦隊もいる。

 陸上船や飛空船も投入しており、列強国専用の切り札である魔獣部隊の試験投入も始まろうとしている。

  

 陸・海・空を抑えている。


 もはや勝ち目など存在しない。


 そうして手が空いた海上艦隊群は日本を目指す事になった。

 一億以上の人口を持つにも関わらず、十万しか軍隊がない、突如海上に転移したホラ吹き国家と言う印象が強い。

 軍事力も貧弱らしく、魔法も龍もいない。

 恐るるに足らずらしい。


 仮に一億の人口が本当だとしてもそんな国がどうして今の今迄大人しくしていたのか説明が付かない。


 大方どっかの孤島に出来て、ただ見栄が強いだけのでっち上げの国だろうと思った。


 今回の作戦目的はその国の探索と征伐である。



 艦隊は進んでいった。真昼の海の上を進んでいった。


 若き王族の銀髪の美少年、一人メルシアは副官の赤髪のセミロングヘアーのリアラと共に艦隊を進める。


 周囲を固めるのはメルシアの魔導艦隊だ。

 

 上空には龍騎士団に混じって試験投入した魔導兵器が飛んでいる。

   

 漆黒の旗艦、ケルベロス。

 いわゆる双胴艦で戦闘能力はなく、作戦指揮能力に特化した艦である。

 駆逐艦やドラゴンを搭載した竜母艦などもあった。


 艦隊の数はおよそ百隻。


 先行して殲滅王女カラミスの艦も先行している。

 此方も百席以上存在する。

 

 総数二百隻を超える艦隊の半数を投入している形だ。

 

「しかしカラミス王女が動くとは思いもしませんでしたね?」


 と作戦指揮室でリアラが言う。

 赤い帽子を身に付け、スカートに制服姿だ。


「戦闘狂のイメージがあるが、実の所はただの残虐非道な、勝ち戦しかしない女だからな。悪い意味で王族らしい王族だよ。暇潰しに参加したのだろう」


 不満げにメルシアが語った。

 王国貴族らしいマントに煌びやかな礼服を身につけている。


「はあ・・・・・・で? 我々は良いんですか? 手柄取られちゃいますよ」


「どうもきな臭いんでな・・・・・・杞憂ならそれでいい。手柄の一つや二つくれてやればいい」


「どうしてそう思うんですか?」


「相手が正直過ぎるからだ」


「正直?」


「一億はハッタリかもしれないが、問題は総兵力が十万と言うワードだ。ハッタリをかましたいのか、馬鹿正直に伝えたのか良く分からない部分がある。そこが疑問だ」


「成る程――」


「ハッタリをかますにしても世間知らずな印象がある。それに相手のニホン国の船を見たそうだ」


「どんな船だったんですか?」


「最初は小型船で上陸したがその小型船は魔導機関を搭載した我々の船よりも大きい、純白の船(海上保安庁の巡視船)だったらしい――砲は小さくて少ないそうだが・・・・・・」


「それなりの技術はあると言う事でしょうか?」


「だろうな。それに二週間前、ユリシア王国海に謎の鉄製の飛行物体と兄上のディアスが遭遇したらしい。たったの二機で龍騎士団を翻弄し、ニホン国を名乗り戦闘意思は無い事をずっと伝えて攻撃せずに最後は逃げていったとか・・・・・・」


「龍騎士団の猛攻を受けて手を出さずに逃げたんですか?」


「そう報告を受けている・・・・・・もし本当だとしたらとんでもない国にケンカを吹っ掛けた事になる。あの王女もただではすまんだろう――」


「で、では知らせた方が?」


 ハッと、メルシアは鼻で笑った。


「あの王女が俺の言う事を聞く様な奴だと思うか? それにアイツは真実こそ最大の敵を絵に描いたような奴だぞ? まあ一応は教えておいたし録音もしておいた。これで咎められる事は無いだろう」


「はあ・・・・・・」


 何だか納得いかないように副官のリアラは頷いた。



 太陽も頂点に達し、極西基地の更に西の海上までカラミス王女の艦隊は迫っていた。


『ここから先は日本の領海である!! 繰り返す!! ここから先は日本国の領海である!! 引き返せばこちらも攻撃はしない!!』


 鉄の飛行機械がドラゴンに追われながら警告を繰り返す。

 竜騎士団は警告を一切聞かずにスグに叩き落としてやる気満々で攻撃するが警告を行う敵の飛行機械に掠りもしなかった。 


「何しているの!! さっさと落としなさい!!」


 赤髪ロールの煌びやかな、いや煌びやかな過ぎるドレスを身に纏った王女、カラミスは旗艦から金切り声をあげた。


「無理です!! 敵の速度が速すぎます!!」


「ええい!! 落とさなければ打ち首と伝えなさい!!」


「ハ、ハッ!!」


 凄い屈辱的だった。

 遊ばれているとさえ思った。

 艦隊も攻撃を繰り返している。

 しかし早過ぎる上に高度が高くて掠りもしない。


『此方駆逐艦レード!! 日本国の戦艦らしき船を確認!! 灰色の巨大な艦だ!! 大きい大砲が一門、小さい大砲らしき者が一門!! 白い生地に赤い丸の国旗を掲げている!!』


 と慌てたような報告が入った。

 

「そんな船で何が出来るというの!? 此方は百隻もいるのよ!? どうせハリボテの巨艦でしょうに!」


 そして艦隊の前方に大きな水飛沫が上がった。自分達の魔船の全高よりも高い。

 何事かとカラミス王女の周囲も慌ただしくなる。


『これは最後通告である!! 繰り返す!! 最後通告である!! もし進路を変更して退去しない場合は攻撃を開始する!!』


 そう言って戦闘機は飛び去っていった。

 打ち首になるので竜騎士団も遅れて後を追う。


「ふん、何か策でもあるのかしら?」  


「念の為、海流や周辺を魔力探査機で調査していますが・・・・・・」


 と、付き人が告げるが――


「どうせ小賢しい手を考えているのでしょう。何があっても数で押し潰しなさい!!」


「は、ははっ!」



 イージス艦・那珂(なか)。


 年配の艦長・君島 孝文(きみしま たかふみ)は覚悟を決めた。

 背も高く体もガッシリして顔も仏頂面。

 四十代始めで艦長としては若手の部類だ。

 

 彼もまた戦時昇任と言う形で艦長を務める事になった。


 戦時中は東側、最終決戦で異星人と戦い、そして未知の星に来て早々今度はファンタジー世界の敵と戦う羽目になる。


 もしかして日本は呪われているかもしれないと思った。


「敵艦進路変えず!!」


「航空自衛隊機、敵生物から距離を取り、攻撃待機状態ですがこのままですと戦闘になります!!」


 悲鳴に近い声で状況が次々と知らされてくる。

 最悪である。


 もし戦闘指示を下せば――研究会と称して何冊か見た「自衛隊が異世界で暴れ回る」物語みたいに「どっちが悪役なのこれ?」みたいな自衛隊無双と言う名の虐殺紛いの戦闘になるだろう。


 だがこの敵を放置すれば日本は泣きっ面に蜂――何しろ外交官に植民地になれと脅迫して来た連中だ。


 偏見かもしれないが、日本に上陸させたら民間人相手に虐殺、暴行、略奪して奴隷下したのち土地を植民地化するのだろう。

 

 その可能性が一%でもある限り君島艦長は「やむおえんか・・・・・・」と呟き決心した。


「航空自衛隊にも知らせろ。我々も攻撃を開始する」


「りょ、了解――」


 と、戦闘態勢に移行する。



 航空自衛隊極西基地飛行編隊。

 航空管制機ウェザーリポートの指示で攻撃を開始する事になった。

 その中にはカラスのエンブレムを付けた二機の戦闘機の姿もある。


『此方、ウェザーリポート。残念ながら戦闘開始となる。各員の健闘を期待する。敵の航空戦力を優先的に排除し、余裕があれば艦隊に可能な限り攻撃を加える事。ただし旗艦と思われる敵は許可があるまで攻撃しない事――敵軍が暴走する恐れがあり、戦闘が拡大する恐れがあるからだ』


「了解、レイヴン1、交戦!!」


『レイヴン2、交戦!!』


 そして二機の戦闘機が竜騎士団五十機目掛けて飛ぶ。

 他の飛行機編隊、総勢二十機近くの戦闘機編隊も向かった。


 その中には対艦攻撃部隊も混じっており、対空戦闘を行うのは精々十機ぐらいだ。


(・・・・・・虐殺紛いの戦闘になるなこりゃ)


 レイヴン1、川西二尉はそう自嘲しながら魔改造Fー4を飛ばす。



「なんだアイツら!? 突然向かって来たぞ!?」


「ようやくか・・・・・・これで戦果をあげられる!」


 竜騎士団は突然猛スピードで突撃して来た。相手に驚いた。

 だがこれでようやく戦闘が出来る。

 そう思っていた。


「何だアレは!?」


 そして何やら機体の内部や翼の下から何か高速で向かってくる槍を飛ばし、そして光を放ちながら飛び込んで来た。


「ど、ドラゴンが一撃で!?」


「うわああああああああ!? 何だこの攻撃は!?」


『さ、散開しろ!?』


 空中で赤い霧が舞い、爆発と共にバラバラになって海に落ちていく。

 気が付いたら敵の飛行機械は自分達を横切っていた。

 このガーデニア大陸の空の覇者はドラゴンである筈だ。

 例え魔法戦士であっても生半可な魔導兵器であっても倒せない。

 機械式の飛行機械の研究は進められているらしいがとても戦闘に耐えられない代物であり、ドラゴンこそが空の覇者である。


 それが常識だった。


 戦闘開始してから十秒もしないウチに五十騎のウチ、半数が落とされた。

 何が起きたのか碌に思考が回らない。


 だが――次々と叩き落とされていく。


 皆破れかぶれで攻撃するが空を猛スピードで切り裂く様に飛ぶ敵の機械式飛行機には届かない。


 逃げ出したいがあの虐殺王女の事だ。

 逃げれば許しはしないだろう。

 だがら最後まで戦う他なかった。



 カラミス王女は味わった事がない絶望の色で顔が染まっている。

 三分も経たずに竜騎士団が全滅。

 

 艦隊もこの頃には半数近くが敵が放つ光の槍で海の藻屑と化した。

 船が轟々と燃えさかり、海面は船の破片や投げ出された兵士、人体のパーツなどが散乱して地獄絵図と化している。

 

「前進!! 前進しなさい!! 敵はたったの一隻よ!! 早く近付いて我々の砲を打ち込みなさい!!」


 金切り声を挙げて命令を送る。

 だが近付いた先から攻撃される。

 制空権も完全に握られ、空から飛行機械の攻撃が白い槍を打ち込むと爆発を起こし、その一撃で船を海の底に叩き込まれていく。


 カラミス王女が知る由も無かったが対艦攻撃に特化した戦闘機F-2の改良型を操る、ウォーシャーク中隊による攻撃である。

 外宇宙と戦争による急激なテクノロジーの進化で戦争以前に配備されていたFー2と比べて全てが改良されている。  


 レイヴン1、レイヴン2もミサイルを撃ち込み、艦橋に機関砲を撃ち込むなどして次々と戦闘不能なり沈めていく。

 そのダメージにより魔導機関が暴走して爆発する船などが相次いだ。


 魔導機関の船は既存の帆船に比べれば頑丈である。

 風や海流の影響も無視出来る。

 嵐にだって耐えられる。 

 それに艦によっては動力と直結した主砲を持つ攻撃艦もある。

 

 代償として航続距離に難が出たがそれは戦略、戦術面である程度カバーできる。

 

 だがドラゴンのブレス一撃で落ちる程ヤワな船ではない。ましてや機械式などに。

 

 しかし現実は非情である。


 次々と。


 次々と沈められていく。


 百隻いた艦船もあっと言う間に残すところ三十隻となった。


「他の艦は前進!! 旗艦は後退するわ!」


「それでは――」


「言う通りにしなさい!!」


「は、はい――」


 旗艦だけ逃げ去り、他の艦隊は魔法や大砲を飛ばすなどして必死に応戦していた。

 士気は最低も良いところである。

 何しろ見捨てられたのだから。

 だが従わなければ処刑される。

 その恐怖だけで縛られていた。




『此方ウェザーリポート。敵の旗艦と思われる船が逃走を始めた。他の艦は交戦している――不味いな、このままだと殲滅戦になる』


 自衛隊サイドとしては今後の事や心理面を考えてなるべく無駄な出血は避けたかった。

 それを考えれば今の状況はとてもまずかった。


『じゃあウェザーリポート。どうするんだ?』


『落ち着くまでお茶でもするか?』


 他の戦闘機パイロットもそれぞれ不満を述べる。


『待て、上層部から指示が来た。旗艦の拿捕命令だ』


「此方レイヴン1、攻撃目標を指示してくれ」


『分かった――やれるのか?』


 そしてレイヴン1、川西二尉が搭乗するFー4JCはもうミサイルを撃ち付くし、ガンポッドや機銃をだましだまし使って手当たり次第に敵陣中部から後方の船を攻撃していた。

 だがまだ敵旗艦を行動不能に出来るぐらいの弾薬は残っていた。


『レイヴン2――ちょっと何する気!?』


 桜木三尉は突然急降下し、海面スレスレで猛スピードで飛ぶと言う自殺行為的な飛行技術を発揮する隊長に驚愕した。

 あっと言う間に敵の旗艦――まるで船に城を乗っけた様な外観の大型船に辿り着き、機銃やガンポッドの射程内に入れる。

 次々と機銃の弾が敵の旗艦の船体後部に吸い込まれる。

 爆発こそしなかったが目に見えて速度が遅くなっていく。



「推力停止!! 動けません!! この艦は漂流状態となりました」


「ええい!! どうして!? 相手が蛮族では無かったの!? メルシアの艦隊は何してるの!?」


「メルシアの艦隊は我々の状況を知り、撤退しました!!」


「~~~!! 私が女王になった暁には絶対処刑してやる!!」


「それよりもこれからどうするか――」


「降伏するわ!! 私は王族だから殺されはしないでしょう! そして本国の逆襲に乗じ、その暁にはニホン国の国民一人残らず奴隷にして王族は一族郎党女子供散々苦しみ藻掻かせた後、殺してやるわ!!」


 そう彼女は喚き散らす。


 こうしてカラミス王女達は捕虜となった。


 他のバルニア兵士達も数多く捕虜となる。

 

 これが日本とバルニアとの戦争の始まり。


 そして後の歴史家に「バルニアの悪夢」と称された戦いの始まりであった。 

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