三 一年後


 電子音。

 男の携帯電話が鳴った。


 上司からだった。穴が増えた。大きくはないが、場所は海の中だという。

 最悪だ。一瞬そう思ったが、詳細を聞いて男は胸をなで下ろした。穴は砂浜から、そう遠くない浅瀬にあいていたのだった。


 前々から予想はされていたことで、対策は考えられていた。


 海ごと覆うのである。それで隔離できる。


 深海なら、と思うとぞっとする。だが、これからも穴は増えるだろう。予感と言うには、外れが見えないので、これは確信だ。


 超安定物質に毒性はない。そう、考えられている。


 だが、害はある。海に大量に散れば、そこにいる生物は呼吸が困難になる。植物の管に詰まることも分かっている。


 地中深くに。深海に。空に。もし、穴があいたら。

 いや、既に穴はあいていて、気が付いていないだけなのかもしれない。

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