第18話 国王の判断


──王城につれてこられたソフィはレックスと共に国王ウィリアムに謁見する。



 丁重に扱われたので悪い話で連れてこられた訳ではないことは分かるが、未だに理由が分からない。

 ウィリアム様は目を細めてレックス君の方を見ているが、一体どのような話がされるのか緊張しながら、その御言葉を待つ。


「よくぞ来てくれた……君がレックスなのかな?」


「は、はい」


「やはりそうか……」


 ウィリアム様とレックス君が一言二言交わし再び沈黙が訪れる。

 ウィリアム様は目を離すと居なくなってしまうと思っているのではないかと言うぐらい、レックス君を見つめ続けているのだ。

 しかしその沈黙を破ったのは王妃のエリザベス様だった。


「あなた、やはり間違いないのですね」


「ああ、間違いないだろう」


 私はレックスと二人で顔を見合わせるが、やはり何のことなのかが分からないが。


「エリザベス様、一体どういうことなのでしょうか?」


「ああソフィ、まずは君にも謝らなくてはならないでしょうね。どうか私の息子の行いを許しておくれ」


「お止めくださいエリザベス様。そのような御言葉は勿体無く存じ上げます」


「いやソフィ君には本当に申し訳ないことをした。どうか許しておくれ」


 エリザベス様に続きウィリアム様までも謝辞を述べ頭を下げてくる。


「そんな…………ジャイアヌス様との婚約破棄は私にも至らぬ所があったからです。エリザベス様のように上手く立ち回る器量がありませんでした」


「フフフ、そのようなものは直ぐに身に付けられますよ」


「うぬぬ」


 ウィリアム様はエリザベス様に尻に敷かれているようで、その言葉に困った表情をしている。


「私のことはもう大丈夫です。それよりも此度のことを教えて頂けますでしょうか?」


「そうだな……レックスも落ち着いて聞いてくれたまえ」


 こうして長々とした前置きを終え、ウィリアム様が直々に私たち、いやレックス君がここに連れてこられた理由を説明してくれた。

 レックス君の身に付けていた組紐から全てが繋がり、事実関係が調べられてレックス君が例の国王が探しておられた子供であったことが明らかになったことを。


「えっと、つまりレックスく……様が王子様ということでしょうか?」


「そういうことだ」


 レックス君も突然の事実そして目の前にいる人が自分の父親と知らされ、どう受けとれば良いのか分からない様子である。

 しかしその驚きの方が上回り、緊張は解けたようだ。


「待ってください、国王様。ご冗談ですよね?」


「いや、お主は間違いなくワシの子よ。その黒髪は母エルサに」


「そしてその目はウィリアムに良く似ているわ」


 未だに同様を隠せないレックスの側に国王様と王妃様が歩みより、国王様がレックスの両の手を掴む。


「君は間違いなく、ワシの子だ。これまで苦労を掛けてすまない。そして君の母親を守れなかった、愚かな父を許してくれ」


「…………僕は」


「今はまだ答えが見つからないかもしれないけど、ゆっくりと答えを見つければ良いのです。ここがあなたの家になるのですから」


 まだ私の頭が追い付いていないけどレックス君が実は国王様の子供で、国王様と王妃様がそれを受け入れたから落胤では無く正式に認められた庶子であって、えっとえっと……つまりつまり…………。


「ソフィ様、僕はどうしたらいいんでしょう?」


「レックスく……いえレックス様。もうレックス様は自由なのです。私がではなく、御自分がどのようにしたいか決めれば良いのです」


「そう、なのですか…………いえ分かりました」


 こうしてレックス君が正式に王子として受け入れられることが認められることになった。

 また出生の時期からレックス君が第二王子として認められることになり、ジャイアヌス様は第三王子になるであろうことも伝えられる。


 しかし今日に至るまでの一切は全て秘密裏に行われていた様で、明らかになった今、城内は大変な騒ぎに包まれることになった。

 そして当然それは、城外に視察に出ていたジャイアヌス様の耳にも入ることになる。



 こうしてソフィとレックスは、これまでの穏やかな日常には別れを告げ、ジャイアヌスを国王に推す者達と覇権を争うことになるのであった。

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