第4話〜完〜

 眠ってしまった影を、霧は静かに眺める。

 膝上にある、寂しがり屋は、もう、寒がってはいなかった。

 昔なら、そんな素振りは見せなかったのに、どうやらうつろっていくにつれ、素顔、本心を露わにするようになったらしかった。

 それさえも、愛おしい。

 頭を撫でれば、気持ち良さげに眠る嫁の黒髪に手が気付く。

 猫のような手触りだと。

 口が笑んでしまうのは、仕方がない。

 こんな夜もいいな、と。

 ただ、昔もこうしていたかったなどと、もし、思っていたのなら、隠していたのなら。

 気付いてやれなかった、この鈍さを恨む。

 出来れば、ずっと、このまま。

 一緒に、居たい。

 言えはしない。

 恥ずかしさが勝る。

 それでも、言ってやらないと、何処かでまた影が寂しがる。

 もう少しだけ、待ってくれ。

 朝には、また抱き締めて、頭を撫でてやるんだ。

 それから、それからは。

 睡魔がゆっくりと現れる。

 夜影を姫様抱きし、ベットの方へと向かった。

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聖なる夜は二息でいいの 影宮 @yagami_kagemiya

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