模索 8

 早くも警察が関東やくざのナンバー3の横浜の組長を任意同行した。合わせて組事務所の捜索が始まった。どうもあの検察の人物の動きのように見える。新聞には日本1位となる合併の詳細が載せられている。ただこの決定には閣内の反対もあるようだと書かれている。この2行だけの合併では認められないという意見だ。

 カオルは朝一番の私との濃密な交渉を終えてマネージャーのワゴンで『白薔薇』に戻った。私は次の作戦のために大阪の若頭の携帯に電話を入れる。

「そろそろ掛かってくる頃かと思ってたぞ」

「もう少し東京に仕事を残しています。横浜の組はどうなるのでしょうか?」

「そのことだな。組としては出過ぎたようだ。裏情報ではどこから手を回したのかタイに行っていた子分がゲロしたようだ。これは仲間内の抗争になったようだ」

「そういうことってあるんですか?」

「金と力だ。私だっていつそうなるかもな。関東のやくざの金の流れが変わってきている。どうもナンバー2の武闘派に誰かが金を流している」

 今敵対しているのは頭取ということになるが。

「これはここだけの話だが、あの黒サングラスの身内が親分を売ったと噂だ。関西もこれから厄介なことになる。関東と連携している武闘派が動き出した。今度の銀行の合併でもやくざ界は大変動になる。金の流れが変わるのだからな。その頭取と早く話を付けた方がいい」

 若頭の電話を切った途端内線のランプが点いた。

「外線からです」

「・・・」

「先日検察の幹部と同席したものです。今から車を迎えにやらせましたがもう一度会えませんか?」

 確かにあの横にいた男の声のようだ。あの時は漠然と見ていたがどこかでよく見た顔だったような気がしていたのだ。

「やはり記憶がないようでしたね」








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