模索 7

 朝サエに生存確認の電話を入れた後、カオルが引き継いで長電話をしている。今日は第1課長の車で検察の庁舎に入った。すでに会長から原本のUSBのコピーが渡されている。部屋に入ると事務官もいなく背広姿の男性がソファーに2人掛けている。向こうは名刺は出さずに記録もしないようだ。

「USBを見ました。頭取が積極的にITMファイナンスに関与していたのはよく分かりましたが、不良債権については伊藤氏の比重が大きいでしょうね。これはすでに検察では見解が出ています。問題は頭取とNの係わりです。どうもこの部分はあなたが担当していたようですね?」

「記憶は戻っていないのですが、確かに担当していたようです」

「NはNのままで話してください。伊藤氏の過去の証言では裏金の半分を頭取にバックしていたようです。伊藤氏の裏通帳は確認しましたが、すでに全額引き出されています。調査では関東の組だろうと考えています。頭取側の裏金は全く調査できていません」

「それは記憶にありません」

 貸金庫は墓場まで持って行こうとカオルと話してる。

「ただUSBを見て金融再編を考えていたようです。Nとはそこでは意見が合ってたようです」

「Nを特定するのは検察では考えていません。とくに現在の段階ではNの証拠のようなものはありません」

 隣で黙って聞いている男性が初めて口を開く。

「あなたはよく週刊誌を使っていますが、Nについては触れないでほしいのですよ」

「了解しています。私の情報では今一番危ないのは関東のやくざです。タイでの殺人はおそらく関東のやくざの指示です。『白薔薇』のママの監禁もそうです。それに私の交通事故も彼らでした」

 頭取の関与を軟らかく否定した。






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