模索 9

「この間は失礼しました」

と名刺を出す。編集長の肩書だ。

「なぜ検察と一緒にあの席にいたのか不思議だろう」

「そうですね」

 案内されたのは永田町にあるビルの編集室の奥にある応接室だ。

「当時のNの私設秘書でした。あなたとも仲良くさせてもらっていましたよ」

と私とグラスを傾けている写真を1枚置いた。

「あなたが行方不明になった頃、裏作業が閉鎖になり私も独立の道を選びました。それが今になってNから再登場させられた。我儘な人だ」

「頭取とNの間はどうなのですか?」

「よくない。だが戦争を始めたわけではない。ただ和解の案がまとまらない。私も動いてみたが接点を見つけるには至っていない。まずITM事件をこれ以上拡大させない手を打った。頭取は資金の流れを横浜の組から変えた」

「私に何をしろと?」

「今のままではまだ『白薔薇』のママもあなたも危険だ。2人は組の命綱になっている。Nも頭取もあなたのカードを気にしている。私が思うに記憶がないあなたなら逆に情報に基づいて冷静な判断ができるのではと。昔も私とあなたは我儘な主人のお世話をしてきた」

「でもNは頭取を切りたいと思っているでしょう?」

「もちろんそうですが、Nも派閥の裏の追及を受けています。それに現実資金不足になっています。Nも資金パイプを失っているのです。合併の新頭取は他の派閥のパイプです。私が頭取とあなたを安全なところで合わせます。まず頭取の意思を確かめてください。その後私とあなたの立場も含めた摺り合わせはどうですか?」












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