新しい道 11

 この赤坂のホテルは総理が私との打ち合わせでよく使っていた。それにUSBから総理の個人携帯の番号を見つけていた。この番号は私設秘書以外頭取のような一部しか知らない。会長との会談を終え会長の携帯から直接番号に連絡を入れた。声を聞えるようにした。

 しばらく呼び出しが続いて、それから長い沈黙があった。

「第2課長の新堂です。ご無沙汰しています」

「記憶を失ったと聞いているが?」

「まだ記憶を失ったままです。ですが『白薔薇』のママを助けに出てきました。私の資料は手元にあります。よろしく伝えてください」

 頷いたような声を残して切れた。

「総理の声だ。今度は私から頭取と面談を申し込む」

 と言うなり会長がメモに自分の携帯番号を書いた。私はその足で有楽町の雑居ビルに向かう。これもUSBの中に打ち合わせ記録として出てくる。どうも私が個人的に使っていた探偵のような気がする。

 ノックしてゆっくりドアを押す。手の感触が覚えている。

「へえ、新堂さん」 

と机の向こうから声がかかる。彼は私を応接室に入れると鍵をかけた。

「君が消えてから、伊藤が何度も現れた。俺に乗り換えろと言っていたが彼奴は信用ならんのでな」

「頭取は?」

「頭取は私の存在を知らない。まだ記憶がないままなんだな?」

「そうだ。力を貸してほしい。金も用意できる?」

「金は最後に300万貰っている」

 私はメモ帳に頭取の別荘の住所を書く。

「ここに『白薔薇』のママが監禁されている。助け出せなくていいから調べてくれ」









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