歪める 8
他誌だが『白薔薇』のママの伊藤共犯説が見出しになっている。サエがモーニングを食べながら涙ぐんで見ている。ボンが見つけてきて見せたようだ。
「ほんとなの?」
この記者は元々ママは伊藤に女になる手術代を出してもらって、『白薔薇』を持たせてもらっている。それで彼の勧めで頭取と寝ている。それで頭取の情報を流していたと説明する。だから社長との絡みも伊藤のために撮っていた。伊藤が姿を消してからも伊藤の隠れ家の横浜の倉庫に出入りしていた。これには黒サングラスの車に乗る写真が載っている。
今話題の第2課長を自分の部屋に迎え入れたのはママだ。そこで伊藤の指示を受けた係長がガスの栓をひねった。それは頭取の指示で彼が伊藤とママの関係を調べていたという。この辺りはそういう風に見られているのかと思う。情報を都合よく繋ぎ合わせている。となると今回はママが社長を殺したという繋がりになる。
朝刊を取る。やはりITMファイナンス事件の経過が記事になっている。ここには『白薔薇』のママが検察に留め置かれていることが殺人の疑いと書かれている。アリバイについては証拠になるものがない。
「この日はカオルと白壁のホテルにいた。証言してもいいかい?」
サエは赤ちゃんにミルクを飲ませている。
「私はカオルと目の前でイサムが寝ても構わないから」
「カオルは私を助けてくれた。今も私のために頭取の要求を呑んでいる」
「そうよねえ」
「今日検察に行くよ。出来るだけ週刊誌の餌にならないようにしてみる」
検察は本気でカオルを共犯者とは見ていない。
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