歪める 7

「寿司を食べませんか?」

 帰るところを見透かして記者が訪ねてきた。

「昨日から『白薔薇』のママが検察に泊められています。任意同行ではないのです」

「泊められた?」

 さすがにその情報はなかった。

「この情報はまだどこも記事にしていません。それだけに第2課長の意見を聞きたくて」

と言いながらビールを注いでくる。

「まず警察は社長の自殺を疑っています。確かに不正融資のあなたのメモが出て不利になっていますが、その証拠を示されたわけではありません。本人も今回は退任後の次の顧問も決まっています。それに彼が受けたバックは不明のままです」

「さすがに番記者ですね」

「『白薔薇』のママはちょうど社長が検察を出た時間には大阪に戻っています。つまり彼女にはアリバイがないのですよ。社長は検察で待っていた黒塗りの車に乗りました。警察で調べましたが盗難車でした」

「まさかママが社長を殺してどうなるのですか?」

「検察はそう思っています。これは私の勘ですが、頭取に検察は注目しているようです」

 それは何度かの聴収でも私も感じました。どうも伊藤はもうこの世に中にはいないような気がする。

「殺人は警察の管轄ですからね」

「ママはどう答えていますか?」

「大阪店にいたと。だが証人がいません」

 その時間だと私と阿倍野の白壁のホテルにいた。カオルはそれを伏せている。

「検察は殺人とは考えていないが、聞いておくにはいい機会だと思っているはずです」

 困ったことだなあ。







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