歪める 6

 集金の合間に昼飯にボンと女将に店に入る。ボンは親父が倒れたので取り敢えず本店に5時から入るようになっている。それで最近は酒の配達はアルバイトを雇い、夜学はしばらく休んでいる。

「フミコ入院したんか?」

「サエのようにボンとはいかんもんな」

「確かに」

 ボンはサエが男だともう知っている。フミコもだ。最近は前ほど妹を強姦したという噂は少なくなっている。妹から抱きついたに変わっている。これはサエがボンを通じて流したものだ。

 ご飯を口に放り込んでテレビの画面を見る。

「あれITMファイナンスの社長やないか?」

とボンが音を大きくする。

「・・・検察の取り調べの後、5時間後死体で浮いていたと・・。外傷は見られず自殺ではないかと・・・」

 自殺か他殺か。伊藤の話を聞いてから頭取に恐ろしいものを感じている、そんな男だったのか。その男の忠実な手下だったわけだ。

「何か裏にとんでもないことが隠れているような気がするな」

 ボンがぼそっと言うのに妙に頷いている。私の記憶が戻ればおそらく解明されることは多いだろう。記憶が戻らないというのも危うい気がする。

「記憶が戻ってもサエを捨てたら許さんから」

「それは分かっている。その言葉はボンに返しておくよ」

 画面には『白薔薇』のカオルの写真が出ている。

「・・・検察が再度大阪にいる『白薔薇』の身柄を確保した…」






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る