歪める 9

「マスコミに伏せるというのは守る」

 電話で話した最初に入った大阪の検察官だ。隣に作業服を着た男が座っている。

「電話で話したように任意で嘘発見器を受けてもらいたい。それとアリバイの証拠を取らせてもらう。いいですか?」

 嘘発見器の手順を取るのに30分がかかる。その間に刑事がホテルに出かける。

「このホテルに修司と透が1晩泊ったということですね?」

 『白薔薇』のママの写真を指差して言う。

「はい」

「あなたの記憶は戻っていますか?」

「いいえ」

 検察官が一人で頷いている。

「ママとは第2課長時代そのような関係だったのですか?」

「とママから聞きました」

「その関係は今回が初めてですか?」

「いえ、同じホテルで2度目です」

「ママは伊藤と組んでいましたか?」

「記憶にはありません。ただ殺されそうになったのを助けたと言っています」

 検察官が机に黒サングラスの男の写真を置く。

「彼に車にぶつけられたと?」

「いえ、私を助けてくれた人がそう教えてくれました」

 2時間ほど様々な質問を受けた。電話が鳴って事務官が頷いている。

「アリバイは採れました」

「彼は同じ階にいます。もう少し待っていただければマネージャーが来ますのでご一緒いただけますが?」

「ええ」

「あなたは頭取に命じられて伊藤とママを調べていた?」

「記憶にはありません」














  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る