戸惑い 3

 始めてやぶ医者を飲みに誘った。もうすでにこの小料理屋では二人とも常連に数えられている。

「どこかに行っていたのか?」

 やぶ医者が最近は明るくなったように思う。

「あの女は相変わらず出たり入ったりですか?」

「ああ、最近は針のプレーでばい菌が入ってう~んう~ん言ってた。君のことを心配してたぞ」

「それよりサエは2週間に1度先生のところでホルモン剤を打ってもらっていたのですね?」

「男と女の関係になったわけか」

 やはりやぶ医者だけはサエが男であることを知っていた。

「カノンが殺されたことは?」

「うちに来る情報通から聞いた。赤ん坊を生んで死んだようだな」

「それがその赤ん坊が私の子供のようなのです」

「厄介なことだあ。今日はその話があったんやなあ」

 美味しそうにコップ酒を飲みながら、

「そういやサエは子供が生みたいと行ってたな。医学的にはそれは無理だと言っておいたが」

「引き取ると言ってるのです」

「サエならそう言うだろうな」

「引き取ったら力貸してもらえますか?」

「異母兄妹が子供を産むか。えらい話題になるぞ」

 笑いながらビールを注いでくれる。

「そのお返しは覚悟しておけよ。サエは子供産んだら最強のいい女だわ。大切にせい」







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