鏡の向こう 7

「頭取は帰ってきてるわ」

 ガレージに車を入れてそのまま応接に入る。年配の家政婦が待っていたようにお茶を運んでくる。

「ここは待合室のような部屋よ。ビデオも盗聴もされている」

 1時間ほど待たされてあのサングラスの男が迎えに来る。カオルと並んで2階に上る。一番奥の部屋の前で声をかける。中から頷く声がする。部屋が開けられて書斎の椅子にカオルに鞭を振っていた男の顔がある。

「新堂君だな」

「・・・」

「記憶を失ったらしいな?」

「ええ」

「カオルからも聞いたと思うが、確かに私はガス栓をひねるように指示した。だがカオルが逃がした。初めは伊藤と3人して裏切ったと思った。カオルに言われて君を連絡係にしたのも不味かった」

 カオルが頭取に勧めたのだ。

「二人の関係は伊藤に言われて知った。それでカオルも始末しようとも考えた」

 カオルは無表情に頭取を見ている。

「だがカオルの体に溺れてしまっている。カオルは君を生かすことで私に抱かられる約束をした。それはそれで飲もうと思っている。ただ私一人のことでは済まない事態になっている。その話を今までしてきた。それで提案だが君が持って逃げたものを返してもらえないだろうかね?」

「残念ですがその記憶もありません」

「ないものは返せないか」

 どういう結論を出したのだろうか。

「もしその証拠が現れたら必ず私は君たちだけでなくサエという恋人も殺す。今日はカオルを置いて帰りなさい」











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