鏡の向こう 8

 翌日遅くなってもカオルは帰って来た様子はない。夕食はあのちいママが運んできてくれた。マネージャーが夕方出かけたという。仕方なく食事をしながらUSBの見過ごしたの部分を見てゆく。

 総理のNとは伊藤は面識がないようだ。この日記を見るとTと初めて国会議事堂の中で会っている。これからの繋ぎは私がやるという顔見世だった。Nにはいつも私設秘書がいた。でも彼と単独で会った記録はない。Nが紹介された頃、彼はまだ総理ではなかった。月に1度くらいの割に鞄を持って国会議事堂を訪ねている。これにはTは同席していない。会った日付に●の印が付いている。これが2つの時もあれば3つの時もある。●は1千万を表すのだろうか。そして党首選の3か月前、◎の印があった。この金はどこから用意されていたのだろうか。

 Nが総理になった夏、Tの指示でNを迎えに行ってKの店に連れて行った。この日は私設秘書が同席していなかった。N一人?とメモがある。この頃はすでに私はカオルとはできていてすでに新宿のマンションにカオルが頻繁に遊びに来ていた。決して店では遊ばない。カオルの部屋にはTがよく泊まりに来ていたのだ。

 やはりその日のことを記録している。私は店でお茶を飲んで待っていた。どうせショーが終わればNを送らなければならない。だが店を見渡してもNの姿もKの姿もなかった。

「明日9時に迎えに行け」

と言う短いTの不快そうな指示が入った。その日があのビデオをが撮られた夜だったのだ。

 急にドアが開いて、ちいママに背負われたカオルとマネージャが入ってきた。さっそくカオルはベットに寝かされて顔をしかめている。

「私が」

とマネージャが言うのをカオルが遮った。

「修司のしてほしい。戦った私を慰めて」








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る