向き合う 2
案の定サエのだんまりが始まった。もうこの状態が3日間続いている。窓ガラスだけは管理人に言って直してもらった。
「妹と言っても腹違いだからやっちゃったわけだね」
この管理人はいつ見てもエロ雑誌を読んでいる。ボンの言うのには毎月飛田に通っているという話だ。さすがに今日はサエにきっぱり頭を下げて謝ろうと思い、仕事が引けてから残業してるだろうサエの店を覗いてみた。前に来ると店はカーテンが閉まっている。中から光も漏れて来ない。背中からボンの声がした。
「大変な騒ぎだったね」
「ちょっと飲めるか?」
「ああ、いいよ。最近親父はほとんど店に顔を出さなくなったので少しサボれる」
立呑み屋の暖簾を潜る。
「もうサエとはできてると思っていたんだけど?」
「ちょっと当たり所が悪かった」
確かに当たり所が悪かった。
「ボンは一度あれを銜えてもらったと言ってたな?」
「一度きり。その時おっぱいを揉ませてくれた。すぐ立つからって」
「前を見た?」
「変な質問だな」
「ボンだけに話すんだがサエにあれが付いているんじゃないかという奴がいる」
まさかという返事を期待したが、ボンはビールをゆっくり注ぎながら、
「昔カラオケバーにカノンという女がいたね?」
「黒髪の女だな」
「そう。そのカノンがサエの腰を見て男の腰だと言っていた。それにこの店ニューハーフの得意さんが多いんだ。さっきもサエの姉さんみたいな人とタクシー乗って出かけて行ったよ」
『白薔薇』のママのカオルが来ていたのだ。
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