向き合う 1

「どうしたのよ?」

 頭を包帯で巻いた私を見て姉さんが大声で叫ぶ。その声がまた頭に響く。

「サエに手を出して花瓶で殴られた?」

 当たらず遠からずだ。今朝いつものようにサエの布団に潜りこんで唇を吸った。薄目を開けたサエは気持よく吸いかえしてくる。次はパジャマを上げてピンと立った乳首を吸う。ここからサエがその気になったら私のものを含む。これが暗黙の了解だ。だが私の頭の中に「サエは私と同じ」というカオルの声が蘇る。

 ついお尻を突き出したサエの誘導する手を押しのけて手を伸ばしてしまった。感触が全くないうちに物凄い勢いで跳ね飛ばされて窓ガラスを突き破った。サエも予想外の出来事だったらしく慌てて血だらけになった頭に薬を塗って黙々と包帯を巻きつける。鋭く睨みつけるが一言もしゃべらない。

「やった?」

 姉さんは女以外には興味がない。

「別れるなら私が二番手よ」

「躓いてガラス窓を割ってしまったんだ」

と言っても延々とその話を耳横でする。

 ふぐりの感触はなかった。カオルの言うのが正しいのかどうか自信がない。だがあの調子なら当分口をきいてくれそうにない。

 サエが男でも好きは変わらない。そう言えばイサムと名前を付けてくれたサエだが、それ以上この町に逃げて来た過去をしゃべることはなかった。一番親しいボンからは一度だけ口でして貰っただけしか聞いていない。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る