新しい一歩 5

 朝押入れから出してきたパソコンに触れてみる。記憶は現れないが、指が自然にキーボードを押している。

「文字を打ち込んでいるよ」

 ひょとしたら銀行員だったのかも?これは少し前から抱いていたものだ。ただ今追いかけている記憶には危険な臭いがついて回る。だからサエにはまだ伏せている。

 今日はあの記者と事務所の近くの喫茶店で会うことにしている。

「関東のやくざを調べましたよ」

 椅子に掛けると写真を出す。

「これは当社の東京の記者が撮った写真です。組長の車の横に立っている男があなたを狙ったサングラスの男じゃないですか?」

「間違いないです」

「この男は関東最大の組長の運転手で組のナンバー3と言われています。裏の事件で動くという噂です。伊藤ともゴルフをやっているのも分かっています。伊藤と組長の繋ぎ役と見ています」

「あのゲラは記事になるのですか?」

「まだキャプからストップがかかっていいます」

「どうしてですか?」

「伊藤は悪役としてスポットが当たっていますが、S銀行の頭取は影に隠れています。ここで出してしまうと影は消えてしまいます。何を持って脅しているのかを掴まないとダメです」

「それのキーは?」

「それはあなたの記憶です。だから私はあなたの記憶に支援します。その代わり特ダネをください。もちろんキャップにもあなたの存在は伝えていません」

「ここ3か月前のS銀行頭取の周辺で私を探して下さい。それと『白薔薇』のママの写真をください」
















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