新しい一歩 1

 今日はサエが私に合わせて休みを取った。ついてきてほしいところがあると言われて阿倍野のデパートの近くまで出てきた。心の中でサエをまた抱く予感で自然とむくっと大きくなっている。あの日からセックスは一度もしていない。

サエはそんな気持ちにはお構いもなく、ガレージが下りた小さな店のブザーを鳴らす。隣のたこ焼き屋から年配の女性が顔を出して下りたシャッターを開ける。

 中は洋服店のようで裸のマネキンが並んでいる。だが店を閉めて少しなるのだろう雑然としている。

「店広げるか考えたが不景気やからなあ。でもここで何しやはるの?」

「既製品で見つからんオーダーの女性服を」

「そんなん儲かるの?」

「小さな店ですから」

 あっけにとられているとサエは鞄から巻き尺を出してきて測りはじめる。私は仕方なく端を持ってうろうろする。

「取引は末でよかった?」

「はい」

「じゃあ。帰る時にまた呼んで」

と引っ込む。

「店やるのか?いくらかかる?」

「全部で800万かかる。ほんとはお金貯めるのに後3年はかかるけど、親分が半分貸付してくれるん。運転資金ももってなあかんと」

「そんな貸付の申し込み見たことない」

「でももう1か月前から決まってんのよ。イサムは押し入れの中覗いたことないのね。ここに来てから作った服が段ボールにぎっしりあるよ。それに可愛いミシンが」

 そう言えば店に行くまでのサエが何しているのかも知らないでいた。









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