過去のこと 6

 今日はボンから誘われていて親父の彼女の女将の店で飲むことになっている。ボンは立飲み屋の定休日のようだ。私は残業して小口貸付の整理をやっと終えた。

「いや珍しいな」

 店に入っていくとボンが女性と並んで座っている。

「夜間の同級生だ」

 どう見ても高校生には見えない。25歳くらいか。

「話してもいいか?親友だから」

 女性の耳元で囁いている、こっくり頷く。どう見ても姉と弟に見える。

「この子の再婚相手の親父が毎日セックスを求めて来るので、相談を受けていたが遂に家出をしたんだ」

「お母さんは?」

「どうも認めているようだ」

「親父は何歳?」

「39歳。母は48歳」

 小声で答える。

「しばらくこの店で寝泊まりして働くように頼んだ。でもうちの親父は認めない」

「ボンは最後まで彼女を守っていける?」

「ああ」

「君はボンでいいのか?」

「好きです」

「二人ともこの言葉を忘れるなよ」

 どうもサエと自分に向かって言っているような言葉に聞こえる。

「どんなことがあってもだぞ」

 










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る