成りゆき 5
朝10時過ぎに姉さんがトラックの送迎の後訪ねてきた。
「番頭がしきりに親分に首だと喚いていたわ。見損なったよ」
「金を奪われたから仕方がない」
「親分はそんなに冷たくない。気にすることはないと伝えるのにやってきたの」
それだけ伝えるとこれから私の分も含めて集金に回るようだ。入れ替わるようにサエが入ってくる。
「そのチンピラ関東やくざの回し者じゃない?」
「いや、やくざの目をしてなかった。それにそれなら身柄を確保していくはずだ」
サエは着替えの袋を棚に置いて、みかんを剥いて口に入れてくれる。それとまだ読み切れていないボンの週刊誌を積み上げる。
「今日はアヤがいなくなったので交代の早番なの」
と言って外に出てく。
「持てるのね」
布団の中からくぐもった声がする。SMの黒髪の女だ。
「今日はだめなの。糞を食ったらピーピーよ。男優病気持ちだったのかしら。さすがに性欲湧かない」
ベットの下に便器が置いてある。妙な出会いだ。
夕方、小頭の顔が覗く。
「チンピラ締めたったで。向こうの頭から100万持ってこさせた。今さっき親分に事情を説明して50万返したわ。この10万はお見舞いや。後は組の稼ぎにさせてな」
「10万もいらない」
「気にするな。でも締め上げて指図した奴が分かったぜ。お前とこの番頭相当の悪やな」
「親分にもテープ渡した。弁償の必要もない。集金のルートも教えていたから堪らんな」
番頭とはじっくり話をしてみようと思っていた矢先だ。
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