成りゆき 4
初月給をもらった。40万も袋に入っていた。番頭が嫌味を言う。その夜にそれをサエにそのまま渡した。
「私は女房でもないし、金貸しでもないよ」
と機嫌が悪い。それで借りていた医者の費用と家賃で20万を渡した。20万でも充分に食べていける。
番頭の件はまだしばらく誰にも伏せている。生きている借入先も大半が日払いアパートだ。とくにあの管理人の棟で8人もいる。そのうちの一人は管理人の紹介で会ってみたが、借入額の1割の礼金を貰ってサインしている。今までの話は念のため録音に残している。
だがこの話をするのにはためらいがあった。元々番頭は気に弱い律儀な男だったようである。それが10年前スナックの今のバツ2のママと一緒になってから、スナックの支払いとママの金遣いに振り回されているようだった。覗いてみたが40過ぎの割には色っぽ過ぎる。子供は2人いるが前の男の子供だ。
いつものように集金を終えて路地の店から出てきた時、左右からチンピラが3人急に飛び掛かってきて、持っていたパイプで思い切り殴りつけられる。誰かのどすの利いた声が聞えたが、そのまま壁に倒れかける。
「また3針縫ったな」
やぶ医者の顔が見えてその横に心配そうなサエと姉さんの顔があった。
「鞄やられた?」
「取られている」
「集金の50万が入っていた。給料から引いてくれ」
「いいのよ。でも小頭が見つけてくれてここに運んでくれたの。犯人を見つけてやると言ってたよ」
「あれは待ち伏せしていたように思う」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます