成りゆき 3
手が空くごとに番頭の集金の合間に小口の焦げ付きの書類を出してきて調べる。ここ1週間で焦げ付きの本人の当時の住所を回ってみた。15人中の15人が日払いホテルの住所でもう住んでいない。だが始めて16人目で一人管理人の男を見つけた。
「少しいいかい?」
管理人室に強引に入る。私は名刺を見せて、
「借り入れが残っているが?」
「そんな借りた覚えはない」
「でもこれはあんたのサインだろ?」
コピーを見せる。
「知らんな!」
今にも逃げ出しそうだ。私は不動産会社の名刺を壁からはがして、
「本社と話をつけるよ」
と言うと急に肩をすぼめて座り込んでしまう。
「ほんとの話をしたら電話は止める」
「俺は借りていない。名前を貸してくれと言われた。それで嫁はんのスナックのツケをチャラにしてもいいと言われた」
「幾らあった?」
「20万ほど」
「でも100万借りていて4回返済をしている」
「そんな金貰ったこともないし、返済したこともない」
「そのスナックは?」
と言うとマッチ箱を出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます