成りゆき 6
翌日包帯を巻いた頭にサエが買ってくれた野球帽をかぶって事務所に入る。親分が朝の人夫出しが終わった頃をも計らって覗いた。さすがに番頭と顔を合わせるのを避けた。最初に姉さんが戻ってきて、
「もっと休んでたらいいのに。番頭は今日から来なくなったわ」
と嬉しそうに肩を叩く。
ドアのところで親分が手招きする。行きつけの小さな喫茶店だ。
「大変だったな悪いな。小頭に聞いた。娘に小口の貸倒調べるように頼まれていたのだな」
私は鞄から調査資料をカウンターに出す。親父は眼鏡を出して無言で読んでいる。
「あの女と一緒になった時からやなあ。止めろと言ったがな。彼奴は女にやさしくしてもらったことがない。あの女はああして男から搾り取る。まあ大変だと思ってその時から給料を上げたったんや」
「金をとられたことは?」
「仕組まれていたんだから仕方がないわ。とにかく経理は今日募集をかけた。会計も貸付も全部見てくれ。将来は娘に任せる気だ。力を貸してやってくれ。本当は娘の旦那になってくれと言いたいが、彼奴はレズだからなあ。サエちゃんを気に入ってるが困るやろ兄貴としては」
親分はよく見ている。
「とにかく小口の整理を始めてや」
さすがに疲れたようにため息をつく。
「若い頃は彼奴は人夫出しをここまで大きくした。それから運転手をずっとやらしていた。経理もわしが教えた。なあ、処分はわしに一任してくれるか?」
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