第12話  黒鞄 4

 翌朝書いて貰った地図を持って三角公園に着く。

「よし、まずは合格や。この袋に入った作業服に変えてメットを被って戻って来い」

 事務所に入ると熱気が凄い。着替えると慌てて親分を探す。親分の周りに同じ作業服の男たちが並んでいる。親分がステッキで私の背中を押す。どうも同じように並べと言うことらしい。居酒屋の顔とは別人だ。親分の後ろに労務者の長い列ができている。

 30分ほどかかって長い列を親分が指揮者のように5つに分けていく。

「よし今日はここまで」

と言う声で労務者は別の列の方に走ってゆく。

 私は急に襟をつかまれて列の前を歩かされる。後ろの男が襟を引っ張っている。公園の端に来るとトラックに労務者を乗せていく。男は無口でアクセルを踏む。30分かかって建築現場に着く。30人ほど乗せている。

「5千円をみんなに渡せ」

 その声に慌てて渡された5千円の札束を配る。

「夕方にもう一度迎えに来る。残っている奴に5千円を払う」

 面倒臭そうに言う。

「これから戻ってもう1往復。それから集金に回る。パチンコ店が3軒、飲み屋が7軒、麻雀屋が2軒、これだけを3時までに済ます。それから朝の奴らを迎えに行く。集金は金を数えてこのノートに記入する。金を数えたことは?」

「分からない」

「困ったおっさんやな!また親父飲み屋の女に頼まれたな。これは昼飯は15分や」












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