第11話  黒鞄 3

 サエの紹介でボンの女将の店で親分と会う。この親分はよくサエの働いているカラオケバーに来る常連らしい。西成では有名な口入屋らしい。

「現場はだめよ」

 サエが70歳くらいの親分にきつい口調で言う。

「何ができる?」

「よく分からないのですが?」

「困った奴やなあ」

 昔は相当暴れたような顔が笑う。

「親分、記憶がないの」

「じゃあ仕事できんやろ?」

「自分のこと分からないだけで結構普通の記憶はあるようなの」

「なら明日から顔を出してみな」

と言って2本目のビールをコップに注ぐ。

「三角公園の事務所やね。明日連れてく。何時?」

「きっかり8時だ。それから関係は?」

「腹違いの兄なの」

「それで安心した。わしがもうちこっと若かったらねいちゃんとやりたいからな」

「もうちんぽたたんやろ」





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