第8話 始まり 8

 抜糸の日になった。下の喫茶店で3人でモーニングを食べる。サエは阿倍野まで買い物に行くと言う。

 病院に入ると診察室にカーテンがかかっていて、ぼそぼそ話声がする。ここは看護婦もいない。ライトの光がカーテンに浮かぶ。

「どちらも使えるね先生?」

 女の声がする。

「また撮影はだめだ」

 どうもあの時の蒲団に包まって震えていた女性らしい。あの時の尻の穴の光景が浮かんで記憶を失ってから初めて勃起した。頭は確かに忘れていない。

 30分待って入れ代わりにカーテンの中に入る。やぶ医者は淡々と糸を抜いていく。それから折れた部分を見て、

「順調や。金はサエに昨日貰っている」

と言うが、サエは昨日ここに来ていたのだろうか。

 30分ほどで終わって路地に出る。どうしたものか先ほどの黒髪の女が出てきて腕を捕まえて奥まったホテルに飛び込む。思い切り唇を押し付けてきてズボンを握る。思い出したように勃起する。それから口に含んで前に押し込む。はち切れそうになると後ろの穴に入れ替える。

 これは体が覚えている。私はどんな男だろう。

「あなたは経験があるのね?初めからそんな気がしていた」

 黒髪の女は震えるように言う。

「時々会ってね。お金は全部私が払う」

と言って源氏名の名刺を渡す。













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