第6話 始まり 6
カーテンの隙間から朝日が差し込む。サエは蒲団を抱きかかえるようにまだ眠っている。何時頃帰ってきたのか覚えていない。光があったところに目をやる。何やら壁に写真が何枚もピンで刺してある。大衆演劇の写真のようだ。優男が番傘を広げていて小ぶりの女が寄り添っている。
「それは1番目の父。隣にいるのが母よ。この時はうちは3歳」
「旅回りの役者だったんだね?」
「そういう記憶はあるね」
サエは思い切りカーテンを開けて胡坐を組む。
「母は悪い女なの。と言うよりセックス魔だったわ。劇場ごとに男を作って、ついに1番目を置いて駆け落ち。それから7人も父ができた。その写真は最初の父。一番いい思い出がある」
「兄弟は?」
「もう子供はいらないと母は中絶していた。よっぽどを嫌っていたみたい」
「なぜ今独りで?」
「10歳の時に家出をしたの。その時に助けてくれたのがボン。イサムと同じようにあの高架下のトンネルで段ボールに包まっていた。風邪をひいて動けないうちをあのリヤカーでやぶ医者に運んでくれた。それからしばらくあの女将の店で住み込みの皿洗いをした」
「同じリヤカー仲間だな」
「でもないの。これもいずれ話すよ」
「謎多き女だね」
「下の喫茶店でモーニングを食べようよ。ボンも来ている」
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