第4話 始まり 4

 少女はお構いなしに複雑な路地を抜けていく。添え木を当てられた左手を肩からぶら下げてよたよた追いかける。

「まずは昼飯」

と言って暖簾を潜る。

 50歳過ぎの女将が無言でビールを抜いてコップを2つカウンターに置く。少女は無造作におかずをガラス棚から持って来て並べる。

「どうや?頭に沁みるか?」

「いや、美味しい」

 暖簾から例の坊主頭が覗いてビール箱と日本酒を交互にカウンターに運び込む。

「ボン、退院したよ」

 無言でボンもカウンターに掛けて食事をする。

「ここはボンの親父の女の店よ。本妻は酒屋の番をしていて、女が3人飲み屋をしてる。ボンはここの女将さんが一番好きだ」

「ペラペラ喋るなよ」

「喋ったる。これでもボンは頭がいいんや。親父の手前あほの様な振りしとるがな。高校3年の夜間生や」

「なら君は?」

「こんなところで歳聞くな。20歳以上だろうが?」

「到底見えないな?」

「またゆっくり話をするわ」

 ビールの飲みっぷりは充分20歳以上だ。

「みんなサエと呼んでいる」

 サエかあ。









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